CLAP LOG | ナノ
「何で今日に限って南瓜のストック切らしてんのよ」

クルー全員分の食事をまかなうべく、それなりにデカイ厨房をくまなく探していたあたしは、自分でもはっきり分かる程渋い顔をした。

「は? 何で南瓜なんだよ」

ハロウィンもう終わっただろ。ボケてんのか? なんて失礼なことを言ってくるのは、たまたま側に居たシャチ。寧ろボケてんのはあんたでしょーがよ、と言いたい。

「当たり前でしょ、冬至なんだから南瓜を食べないと」
「冬至?」
「あー、そういや今日冬至だっけか、ベポ」
「うんそうだよ」

何だかんだで有能な航海士・ベポが肯定したことで、やっとその場の人間にも今日という日の重要性が伝わったらしい。あたしは軽く鼻を鳴らす。

「だから南瓜探してたのよ。見たところ1個も見当たんないけどね」

こいつらの様子からして、今日が冬至ってことは頭に無かったんだろう。ていうか冬至に南瓜を食べるって知ってるかどうかも怪しい。実家に居たときはハロウィンに負けず劣らずの南瓜料理が食卓に並んだモンだけど、此処じゃ期待できそうに無いわね、こりゃ。

「何で冬至で南瓜なんだよ」
「なんでって」

ほーら、言わんこっちゃな……

「冬至っつったら小豆粥だろ?」
「は?」

冬至に小豆粥? 何ソレ。と思ったのはあたしだけじゃないらしい。小豆粥、と口にしたペンギンは、ひょいと肩を竦めて何でも無いみたいに続ける。

「いや、俺の故郷の風習だけどな。冬至に南瓜ってのも多分そうだろ?」
「小豆粥? それなら俺南瓜の方が良いな」
「俺小豆粥で。南瓜あんま好きくねーし」
「待て待て。南瓜も小豆粥も変だろ。つーか食い物関係なくね? 俺ンとこは風呂に柚子入れて入ってたぞ」
「え、柚子湯って冬至限定なのか?」
「俺の実家はコンニャクだったな」
「うちは食い物っつーか冷や酒だな。オヤジからちびっと貰った記憶あるわ」

出るわ出るわ。冬至の風習。いやローカルルール? え、あたし的に冬至に南瓜って当たり前だと思ってたけどこっちはそうでも無い感じ? いや、今更聞くまでも無いわ実際。え。ええー?

「南瓜はねえけど、コンニャクはあるな」
「冷や酒っつーかラム酒だな。流石に清酒のストックは無ェわ」
「柚子は?」
「無ェよ。ミカンならあったぞ。風呂入れるか?」
「やめろやめろ。勿体ねえし」
「小豆は?」
「何かあった」
「マジかよ誰だ買ったの」

そういうわけで本日の夕飯メニューは、小豆粥にコンニャクステーキ。南瓜の代わりになんでかふろふき大根。デザートはミカンで、付け合わせにラム酒。

「……おい、今日の飯当番誰だ」

一部始終を知らないトラファルガーがこの統一性ゼロのメニューにすっごい変な顔をしたのは、まあ予想の範疇だった。
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