CLAP LOG | ナノ
「えーと」

獄都が特務室の館。その談話室。そこに広がっていた何とも微妙で奇妙な空気の中、勇気ある兄貴分の獄卒が、こほんとへたくそな咳払いをして空気を変えようと口を開く。

「あのさ、一応聞くけど」
「はい」

改まった様子で話しかけられた生者の小娘は、そんな彼らの空気を知ってか知らずか、常と変わらずにこにこしたまま。深い溜息を何とか押しとどめて、その獄卒もとい木舌は意を決して口を開く。

「その格好、何?」
「ミニスカポリス(の、仮装)です」

それは例えば、明日の天気予報の中身を聞かれてニュースで聞いたままを答えるような、そんな軽い響き。小さな手でVサインを作ってみせる少女は、確かに現世ではよく見かける青い制服を身に纏っていた。
そう、それだけならまだ良い。問題はその纏っている制服、具体的に言うなら彼女が履いているタイトスカートが……どう余裕を持って見積もっても膝上25センチかそれ以上の武かないことだ。

「ハロウィンの衣装ですよ。うちの学校、行事ごとは全力投球なので」
「へー成る程っていやいやいや待って。ハロウィンで仮装するのはお化けの仮装であってコスプレじゃないよね? なんで警察? ていうかなんでミニスカ?」
「クラスメートがこっちの方が似合うと」
「なんでそこで流されちゃうかなお前はっ」

お兄ちゃんは哀しい、と大袈裟に泣き真似を始める木舌。ちなみに他のメンバーはと言えば、

「すっげー衣装良く出来てんなー」
「別に良いだろミニスカくらい。つか今更だろ怠ぃ」
「いやいや流石にそれは……ていうか本当姿勢気をつけて。見えちゃうからホント」
「お、お前という奴はまた余計に素肌を露出しおってからに……!」
「……」

上から通常運転の穴掘りコンビ、優等生、真面目純情派の鍛錬組である。そんな彼らの反応に、少女は正直苦笑するしか出来ない。確かに少々悪ふざけの入ったコスプレ(仮装)であるが、学校の制服のスカートだってこのくらいの丈にしてしまっている兵も少なくないというのに。

「思ったより不評ですねえ、気合い入れて作ったのに」
「気合い入れたならスカートの丈にも気を遣おうよ」

という、呆れた佐疫のツッコミに上手く答える術は無い。何度も言うが、似合うと言われたからこの丈にしたのであって、別に深い意味はなかったのだ。正式な衣装ならともかく、仮装用ならそこまで風俗に拘る必要もないと思っていたのもある。

「仕方ないですね、じゃあもう1つの方にしましょうか」
「あ、別にあるんだ」
「はい。赤頭巾の衣装なんですけど」
「赤頭巾? 可愛いね、そっちが良いと思うよ」

メルヘンチックなひらひらふわふわ、当然スカートはミモレ丈くらいの衣装を想像した面々が、口々に「そっちにしろ」と言い出す。深く考えずにスカートを切り詰めるタイプの少女は、やはり今回も深く考えずに「着替えて来ますね」と衣装の変更を即決した。
しかし、

「何かさー、これはこれでちっとエロい感じする」

露出の『ろ』の字も無い子供らしい赤い頭巾と、牧歌的な印象のワンピースドレス。それに大して非常にマニアックな感想をぶつけてきた黄色い目の獄卒により、談話室にブリザードが訪れるのはある種の必然だったかも知れない。
[ back to top ]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -