CLAP LOG | ナノ
「悪戯しないでやるからお菓子を寄越しなさい」
「何処の女王様だお前」

うっさい。折角仮装してやってるというのに何様だってのよ。

「何様はこっちの科白だろ、寧ろ」
「黙ってなさいシャチの分際で」
「お前本当俺の扱いが悪いよな」
「何を今更。ていうか良いから寄越しなさいよ。こんだけ船員がその気になってるってのにお菓子の1つも用意してないとか無いわよね?」

ん、とあたしが出した手に、滅茶苦茶面倒臭そうな顔をするトラファルガー。ま、こいつがこんなイベントに乗り気になるトコなんざ想像出来なかったし、ある種予想通りではあるんだけども。
横のシャチが「船長に菓子強請るなんてお前くらいだよ……」とかほざいてるけどあたしは知ってる。ついさっき、ギミックの斧を頭に食い込ませたベポが「船長お菓子ー」と強請りに行っていたのを。そしてこいつがベポ相手にやたら可愛らしいラッピングのキャンディを渡していたのを。

「がめつい女……」
「目敏いと言って頂戴。で、トラファルガー、ベポにあげる分はあってあたしに貢ぐ分は無いっての?」

何故かがっくりと生気を失ってテーブルに倒れるシャチ。疲れたんなら部屋で寝ればと言ってみたところ、「お前のせいだろ」と怒られた。解せぬ。いや間違えた。分かっちゃいるけど反省しないだけ。

「ほら」

あらまあ。ころん、とあっさりあたしの手に落ちてきたキャンディー。びっくりした、散々勿体ぶった割に結構あっけないし。ていうか、

「……ホントに用意してたのね」

そこよ、そこ。あたしが驚いてんのは。

「俺にンな真似すんのはお前とベポくらいだろうと思ってな」
「あら、大正解じゃない。良かったわねこんな可愛らしいキャンディー隠したまま1日そわそわせずに済んで」
「シャンブ……」
「ちょ! 今更取り上げんのはなしよ! 貰ったんだから!!」

ありがちな南瓜……ではなく、南瓜そっくりの色をしたオレンジ味のキャンディーを口の中に入れる。うん、甘酸っぱくて美味しい。

「赤頭巾か?」
「え? ああ、仮装? そうよそれ、赤頭巾。可愛いでしょ?」

にやん、と笑ったあたしの格好は、グリム童話でおなじみの女の子の格好。それにしても幾ら童話とはいえ、赤い頭巾を被ってるから赤頭巾なんて安直な渾名よね。しかも母親までそう呼んでるし。

「狼に食われる奴だったな、確か」
「なんで一番嫌なところチョイスすんのよ」
「男はみんな狼って言葉があってな」
「それ以上続けたらぶっ飛ばすわよ」

やっぱこいつ油断ならないわ。いやーな笑みを浮かべたトラファルガーから距離を取る。
……まさかとは思うけどこの飴、何か変なモン入ってないわよ、ね?

「そこまでゲスな真似はしねェよ」
「心を読むなこの色情魔」

本当にほんっとうに、油断も隙も無いわね。まったく!
[ back to top ]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -