CLAP LOG | ナノ
秋である。夏の暑さとも別れを告げ、「さあこれから何かを始めよう」と決めるには実に都合の良い季節。食べ物が腐りやすいということもなくなり、空気は少し乾燥し、過ごしやすい日も多くなる。
しかしそんな季節も、家と近くのコンビニやスーパーを行き来するだけの毎日を送っていれば、「最近は外出るの億劫じゃなくなったな」程度にしか感じない代物に成り下がるわけで。

「おい引きこもり、たまには外出ろよ」

と、なし崩しに同居している子供、もといローにもそんな苦言を呈されて然るべき、となってしまうわけだ。

「うっせえな糞ガキ。お前こそガキならガキらしく遊んでこいよ」
「俺は良いんだ。つーか、今更あんな子供っぽい遊び出来るか」
「何度も言ってるけど、お前ガキだろ」
「こっちも何度も言ってるけど、ガキ扱いすんな無愛想ブス」

むすっと顔を顰めるローは、ベランダと部屋を仕切る窓の内側。子供がやってきたせいでまだ全然吸っていない煙草を消す派目になった女は、気怠そうに頭を掻いた。

「つーか、コラソンは?」
「スーパー行った。何かアイス食いたいっつってた」
「……何でお前ついていかなかったんだよ」

その高すぎる長身のお陰で、コラソンは怪我が快癒した今も車椅子に乗っている。そうでないと余りにも悪目立ちするし、そもそも建物の扉にばかすか頭をぶつけたり、ぶつけた拍子に転んだりするからだ。しかし車椅子は車椅子で、よそ見すれば操作を誤ってずっこけるのだから、外に出るときは大抵女が付きそうのだが……。

「すぐ近くだしすぐ済むから良いって言われたんだよ」

と、口をへの字に曲げるローは少々不安げだ。何度も面倒を見て貰っていたとはいえ、女より余程コラソンのドジっぷりを知っているローである。やはり心配は心配なのだろう。

「うっかり事故ってトラックにでも突っ込んでねえだろうなァ……」
「縁起でも無いこと言うなよ」
「ただいまー!」

身も蓋も無い女にローが苦言を呈した丁度そのとき、玄関の扉が開いた。それと同時に、やけに弾んだコラソンの声もした。

「いやー、遅くなっちまった。なあ先生、ロー。これ食おうぜ!」
「あ?」

煙草を吸えず手持ちぶさたにしていた女が室内に入ると、コラソンは手に持っていたコンビニの袋から中身をばっと広げた。

「アイス?」
「そう! テレビでCMやってたんだよ! 秋限定のフレーバーっつっててさ!」

ばらりと広がったのは、色とりどりのカップアイス達。栗味、胡桃餅入り、柿味、梨味、紅芋味などなど。パッケージの中央には、それら全てに『期間限定』の文字が躍っている。

「先生あんま外出ないけど、これなら家の中でも秋らしい感じするだろ?」

な? と悪意無くアイスを差し出されて面食らう。もしや先ほどのローのらしくない苦言も、これの影響だったりするのか。

「……おい、めっちゃ溶けてんぞこれ」
「へ? ……あっ、ああー!! ドライアイス入れんの忘れた!!」

持った瞬間ぐにゃりとした感触を伝えてきたカップの中身は、明らかに固体を保っていない。顔を顰めて照れを誤魔化した女の様子に、コラソンやローが気づいていなかったのは、多分女にとって一番の幸いだっただろう。
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