血潮より濃く、光より目映き | ナノ


▼ 謝罪

トラファルガー絶対ぶっ飛ばす。……とは決めたものの、形振り構わずというか、考えなしに仕掛けるってのはちょっとばかし分が悪い。何故なら此処はあいつの船であり、周りを見回しても全員が全員あいつの船員。当たり前だけど。そしてあたしはこの船にどんな設備、どんな備蓄があるのかも分からない。
本人の能力は一応見たけど、あれは多少の弱点があったとして、それを補って余りある厄介さを持ったものだ。ルフィのゴムゴムみたいに分かりやすくもない。かなり汎用性も高そうだし、ただ単に「サークル内の物体と物体の間を入れ替える」「サークル内の物体を自在に切断できる」だけと考えるのは危うい。というか、これ2つ、本当ならそれぞれ別の実で1つずつ達成される能力じゃなかろうか。何というか、せこい。一体何の実なんだろ。というか、何の実なのかはどうでもいいから、弱点が知りたい。弱点が。
とはいえ。

「おかわり!」
「げえっ!? またかよ、ミュリエル!?」
「うっさい気安く呼ぶな。あたしが此処にいんのはあんたらの船長が勝手にやったことなんだからね! 部下なら責任くらい取んなさいよ!」

積み上がった皿が倒れそうになったのを、飛び出してきたシロクマが支え……切れてない。

「あー!!」
「ベポ!?」
「おいおい、大丈夫かー?」

俊敏な割にちょっぴりドジっぽいシロクマ(本当にシロクマらしい。別に悪魔の実の能力者じゃないそうだ。変なの)を、他のツナギ姿の船員が救出する。その間にあたしは7杯目の炒飯を食べ終えていた。ちなみにこの船、船長の意向か何なのか、今のところ食卓にパンが上がったことがない。別に米は米でいいけど、あたしはパンも好きなのでちょっぴり不服である。

「ううう……痛ェ……」
「馬鹿ねえ。ちゃんと加減しなさいよ」
「いや、直接の原因はお前だろ」
「うっさいっつってんでしょ。好い加減にしないと丸焼きにするわよ」

ギロっと音がするくらいキャスケット帽の馬鹿、改めシャチを睨む。

「出た! 手配書の悪人面!!」

黙らっしゃい。凄んだら怖いのは父ちゃん似だ。

「どっか切って無ぇか?」
「それは平気……けど、コブ出来てる……」
「どれ? うあ、マジだ」

ぷくっと膨れた額を摩るシロクマ。笑いながらもちゃんと心配はする他の連中。……何よ、これじゃあたしが悪者じゃない。……いや、まあ、確かにちょーっとばかしは、あたしが悪かったような気がしなくもないような、気がするけど。

「船長に診て貰えよ」
「そうするー……」

……寝覚めが悪い。つーか、トラファルガーの名前が何でそこで出る。

「ちょっと」
「ん?」
「何だよミュリエル?」
「ベポ虐めんなよ」
「うっさい誰が虐めたってのよ。良いからシロクマ、あんたちょっと来なさい」
「え?」
「来なさいっつってんの。ほらこっち」
「え、で、でも俺、船長に」
「来・な・さ・い」
「あ、あ、あアイアイ船……じゃない!」

誰が船長だ。誰が。

「そうそう、素直に来れば良いのよ」
「まるっきり悪役だぞアンタ」
「黙らっしゃい。ほらこっち来て、おでここっちに……そうだあんた、一応聞くけど今風邪とか引いてないわよね?」
「へ? え、あ、うん。おれ元気だよ」
「なら良し」

そりゃあね、あたしが食べたご飯の食器だしね。構わず大声出したのあたしだし。
……ムカツクのはトラファルガーと他数名だし、このシロクマに何かされた覚えもないし。

「……治癒(リカバリィ)」

一応フォローぐらいするわよ。一応ね。

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