血潮より濃く、光より目映き | ナノ


▼ 噴火

「炎の矢(フレア・アロー)!」

あたしの周囲に生み出されたるは、軽く数えて20はあるだろう炎の矢。それは下方に一斉に飛び、下の悪党共に容赦なく襲いかかる。
しかしあたしはすぐに次の呪文を唱え、聞くに堪えない悲鳴を上げて逃げ惑う奴らを追いかけた。

「風裂球(エアロ・ボム)!」

視認出来ない風の爆弾(とはいえ、威力は今ひとつ)に煽られ、武器を持っていた海賊が吹っ飛んですっ転んだ。お互いの武器がぶつかって、二次災による負傷者も発生。こういう連鎖反応は効率が良くて大好きだ。
しかし、

「器用に避けるわね!」

思わず舌打ちしてしまうのは、次から次へと沸いてくる海賊達のどさくさに紛れて狙い撃っているトラファルガーが、涼しい顔してこっちの攻撃を避けまくっていることだ。しかも避けるだけならまだしも、

「『Room』」
「うあっ!」

あっちもあっちで隙あらばこっちにちょっかい出そうとして来やがるのだ。困ったことに……というか、腹の立つことに! 兎に角ことあるごとにこの訳のわからんサークルの中にあたしごと入れようとしてくるのが分かる。
取り敢えず巻き添えくって身体の一部とさよならしたくないので、巻き込まれる度にあたしは飛び退いている。偶然? だったらなんであたしが避けるたびに面白くなさそうな顔してこっちを睨んでくるというのか!

「ほんっと性格悪いわね!」
「お互い様だ! ……シャンブルズ!」

いつの間に船から引っ張り出してきたのか、大砲まで出してぶっ放してきた海賊。まあ大砲の砲弾ってのはピストルより動きも遅いモンなので、あたしとしては何ということもないが、それは奴にとっても同じだったらしい。やはりあたしにはよく分からない単語を唱えたかと思えば、やつの鼻先まで迫っていた砲弾は、気がつけば奴が先程解体していた下っ端海賊の首(それも他の仲間達によって保護されていた)とその場所を入れ替えていたのだ。

「あんなことも出来るのね……」

理屈は全く分からないし、そもそも悪魔の実に理屈なんて通じるのかは謎だけども、要するにトラファルガーは人を生きたまま解体したり、その解体したパーツを好きにくっつけたり切り離したり、はたまた物体Aと物体B(この『物体』は間違いなく生物・非生物を問わない)を入れ替えたり出来るようだ。
……なんつーチート能力。あたしの使う魔術だってこれほど都合良くはいかない。まあその分殺傷能力は低いらしいけども、別に能力で相手を殺す必要は無いわけで。

「このクソアマァ!!」
「!」

とか何とか考えてるうちに、いつの間にかあたしのいた建物の屋根に海賊が登ってきていたらしい。図体のデカイのが3人。物思いにふけっていたあたしは当然次の魔術の準備なぞ出来ていない。うち1人が血走った目であたしを睨み、両手のシミターを振りかぶった。

「死ねェ!!」
「きゃあああ!」

ダメ、斬られる――!!

「なんちゃって」

お生憎様、とばかりに、腰から抜いておいた長剣でシミターを受け止める。その辺の武器屋で二束三文で売られているそれと、あたしの得物の質は比較にならない。受け止められたシミターの刃はあっという間に折れて飛んでいき、あたしの刃はそのまま相手の額に着ずを入れた。

「残念。あたし、こっちの方も一流なの」

返す刀でもう1人の利き腕を深く斬り、最後の1人には顎の辺りに蹴りを入れる。平均的に『こっち』の人間はあたしの『元いた場所』よりも頑丈で打たれ強いけど、脳を揺らされれば気絶するところは変わらない。

「ってゆーかトラファルガー! 共闘するってならあたしの方にこいつら来させないでよね!!」

下からこっちを見上げていたトラファルガーにあたしはがなる。そりゃあ確かにそういう約束をしたわけじゃないけど、『共闘』ってんならそのくらいの気は利かせるべきでしょ!?
と、怒髪天なあたしに対し、トラファルガーは鼻で笑ってこう言った。

「何だ大厄災屋、どん臭ェなァ」
「……ハァ!?」

誰が鈍くさいってェ!!?

「獄炎招(アビスフレア)!!」

っっっっっとにもう、ムッッカツク!!
まとめて溶けろ!! こンの××野郎!!

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