ささくれ

 フィディオが、さっきから痛そうに指をさわっているのを見ていた円堂は、その指を手に取り、腫れている指先を撫でるようにさわった。


 「―っ、痛いよ、マモル」

 「あっ、ゴメン。痛そうだな・・・腫れてるじゃないか。どうしたんだ?」

 「昨日、ささくれが引っ掛かって捲れたんだ。そしたら、今日の朝にこんなに腫れちゃってて・・・痛い・・・」


 指先の爪の横に膿が溜まってその周りが赤くパンパンに腫れてしまっている。


 「これさぁ、膿んでるから腫れて痛いんだと思う。だから、膿を出した方がいいんじゃないか?」

 「やだっ!」


 フィディオは即答すると、手を引っ込めて腫れている指を守る様に握った。


 「早く治った方がいいだろ?見せてみろって!」


 円堂はフィディオの手を強引に掴み、庇っている方の手を剥がすと『イヤだ!痛い!バカバカ、やめてー』と、暴れ出すフィディオ。
 あまりにも暴れるので強く抱き締め、喚いているその口にキスをした。


 「んー、んーっ・・・んーっ!」


 口を塞がれても、喚こうとするフィディオの腫れている指先をグッと押さえると、『うっ』と、短い呻き声を洩らして腰を抜かした様にしゃがみ込んでしまった。

 押さえられた指先がどんどん赤くなり圧迫された膿は破裂したかの様に、爪の付け根からプクッと小さな玉を作り、それは中の膿を押し出すとどんどん大きくなった。


 「フィディオ、膿が出てきたぞ」

 「ーっ、痛いって!マモルのバカッ!」


 円堂はポケットからハンカチを取り出し、指先に溜まった膿をきれいに拭き取り、その指を口に含んだ。
 驚いたフィディオが『ひゃっ!』と悲鳴に近い声を上げた。


 「マモル!何してるんだよ」

 「んー?何と無く消毒」

 「何それ?やだっ、やだっ、離して!痛いって」


 フィディオが円堂のおでこを押して指を引き抜こうすると、強く吸われて『痛いっ!』と今度は泣き出してしまった。
 まさか、泣くなんて思っていなかった円堂は慌てて指を離すと、ポロポロと溢れる涙を掬った。


 「フィディオ、泣くなよ・・・」

 「ぅ、うっ・・・痛いのに・・ひどいよっ・・・うぅ・・」

 「ごめん、俺が悪かった」


 フィディオを抱き締めて背中をトントンと叩くとそれに、気を良くしたのか円堂の肩に頭を凭れかけてきた。
 背中を叩きながら、赤くなった指を手に取りペロッと舐めた。


 「あっ、また」


 フィディオはムーッと怒った顔をして円堂を睨んだ。


 「でも、腫れがマシになっただろ?」

 「・・・ぅー」


 円堂は不満気なフィディオに苦笑しながら、また指を口に含み、今度は愛撫するように舌を絡ませた。


 「やだっ!マモル、やめて・・・っ・・・」


 指を口で愛撫され、だんだんと顔を赤くして、俯いてしまったフィディオは指から感じる快感に身体中が痺れるような感覚に襲われた。
 そして円堂は指から掌へと舌を這わしていく。


 「ぁ・・・やっ、ゃぁ・・・」


 か細い声を出すフィディオの耳元で円堂が囁いた。


 「どうしてほしい?」


 目をギュッと閉じて、円堂に抱きつくと小さな声で『責任・・・取って・・・』と、自分の下半身を押しあてた。
 円堂はニッと笑うとフィディオを抱き上げて、額にチュッとキスをする。


 「ちゃんと、責任取るからさ、機嫌直してくれよな」

 「・・・フン」


 可愛く拗ねるフィディオの頬に自分の頬を擦り寄せながら、自分の部屋へと連れて行った。




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