好きなのに・・・



 どうして、こんなことになってしまったのだろう・・・
 マモルに『俺のこと、好きなの?』って、聞かれたから・・・だから、思い切って『うん』って答えたのに、本当に好きだったから・・・それなのに、どうして・・・




「フィディオ、いいか?力、ちゃんと抜いてろよ」

「えっ?・・・待って、やだっ・・・怖っ・・ひっ・・・いたっ・・」


 十分に慣らされていないのに、マモルは容赦なく俺の中に入ってきて・・・あまりの痛さに涙が溢れてきた。
 痛くて痛くて、『やめて』と言いたいのに声が出なくて、思わずマモルの腕を掴み、グッと握っていた。


「―っ、フィディオ!痛いって」


 マモルが言っているのは、分かっていても痛みに耐えるのに必死で手を離す余裕がなくて・・・
 無意識に更に力が入ったみたいで、マモルに『痛い!離せって!』と、払いのけられてしまった。

 その瞬間、言い様のない悲しみが心に広がって、身体の痛みと心の痛みが重なって・・・耐えきれなくなり両手で顔を覆い、嗚咽を洩らしてしまった。


「うっ・・・うぅっ・・くっ・・・っ」


 溢れ出た感情はもう押さえることが出来なくて、肩を震わせ泣くことしか出来なかった。

 マモルは『どうしたんだ?』と、初めて優しく俺の頭を撫でてくれた。
 そして、顔を覆っている俺の両手に自分の両手を重ね、ゆっくりと剥がしていく。
 涙でグシャグシャになった俺の顔をジッと見つめ、そして・・・軽く笑った。
 その笑いがズキッと胸に突き刺さるような痛みと恐怖を感じた。


「マ・・・モル・・?」


 震える声でマモルの名を呼ぶと、今まで見たことのない黒い微笑みで、俺の頬を撫でながら


「フィディオ、これぐらい我慢しないとダメだろ?」

「我・・・慢?・・・するの・・」

「俺のこと好きなんだろ?だから・・・出来るだろ」

「ぁ・・・」


 そう言うとマモルは腰の律動を再開した。
 身体に裂けるような痛みが走り、その痛みから逃れようと、ずり上がろうとしたら右腕をガッと掴まれ、その瞬間にパンッ!と左頬を叩かれた。


「何、逃げようとしてんだよ」

「・・・ご・・めん・・なっぅ・・さぃっ・・うぅ」


 涙が溢れて、身体を震わせながら怯える俺をマモルは冷たい目で見下ろしていた。


「喘ぎ声ひとつも出さないで、鬱陶しいからさぁ、泣くな!」


 マモルの言葉に、自分の中で何かが壊れそうな感覚に襲われ、瞳に溜まった涙で視界がぼんやりとしてマモルがまだ、何か言ってるみたいだけど、何を言っているのか聞こえない・・・・・・聞こえないじゃなくて本当は聞きたくないのかもしれない・・・

 好きなだけなのに、それだけなのにどうして、マモルはこんな風に俺を抱くのだろう・・・
 どうして・・・


 パンッ!


 頭が一瞬、グラッとしたかと思ったら、口の中で血の味がして、あぁ・・・切れたんだな・・・と思った。
 激しく揺さぶられ身体は悲鳴を上げても、俺の口から声は出なくてただ、口を開けて吐き出した分の酸素を吸い込むだけだった。
 やがて、マモルの息が荒くなり限界が近くなったようで更に激しく突き上げられ、中に熱い白濁を出し俺の上に覆い被さる様に倒れ、果てた。

 耳もとでマモルの熱くて荒い息が聞こえ、俺は顔を横に背けた。



 ―マモルはこんな風に俺を抱いて満足したのだろうか・・・?―



 自分がただの欲の吐き口にされたようで、居た堪れなくなり早くこの場所から離れたかったが、マモルが上に被さっていて動けず、モゾモゾしていると、ガッ!と顎を掴まれた。


「何、また逃げようとしてんだよ」

「ぁ・・・ちがっ、ん・・・」


 言い終わらないうちに、キスをされ言葉は遮られた。
 さっきまで乱暴に抱いていた行為とは違って、キスはやさしくて、戸惑ってしまった。
 頭を包み込むように抱きかかえられ、深くてやさしい・・・そのキスに翻弄され何時しか、もっとしてほしくて、マモルにしがみついた。
 さっきまでの行為がうそだったと思いたくなった時、髪を鷲掴みされ引き離された。


「―っ、痛いっ!」

「さっきは逃げようとしてたくせに、今度はしがみついて来て、そんなにキスが嬉しかったのか?」

「ぅ、・・・ど、うしっ・・・」


 声が震えて詰まってしまう。
 マモルは髪を掴んでいた手を離すと、上体を起こして脱ぎ散らかした自分の服を取り、サッと着るとこっちを振り向いて、俺の大好きな笑顔で信じられない事を言った。


「今度、会うときまでにあそこの傷、治しとけよ。俺はいいけどさぁ、お前が痛い思いするだけだからな!」


 目を見開いて驚く俺を見て、笑うマモルに『どうして、こんな事をするの』と、聞きたかったけど・・・言葉が出なかった。
 マモルが出ていったドアをぼんやりと見つめ、俺はマモルにとって何なんだろうと、不安と悲しみが込み上げてきて、一人ぼっちの暗い部屋で声を殺して泣いた・・・


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