キス



「なぁ、フィディオ」


 後からフィディオを抱きしめ体重を掛けると、俺の重みでフィディオは自然と前屈みになり


「うっ・・・何、マモル?重たいよ−」


 フィディオの肩に顔を乗せると柔らかい髪が頬にフワフワと掛かり、くすぐったくてフーと、髪を吹いたつもりが、その息がフィディオの耳に掛かったみたいで


「ひゃっ!!」


 −と小さく叫んで身を竦めた。その仕草が可愛くてもっと、可愛いフィディオを見たくて、耳元に息が掛かるように囁いた。


「フィディオ、可愛い・・・なぁ、こっち向いて」

「・・・やっ・・・だっ」


 耳まで赤くして、『やだ・・やだっ!』フィディオは首を横に振り俯いてしまった。恥ずかしくて嫌がっているのは分かっていても、あまりの可愛さについつい、虐めてしまう。
 俺しか知らないフィディオの可愛い仕草は時々、自分の理性を押さえるのに必死にさせてくれるときがある。
 だから、これぐらいはいいだろうとフィディオの顎を左手で逃げないように掴んで耳を甘噛みした。


「!!・・・ぁ・・やっ・・」


 体を僅かに震わせながら、フィディオはそのまま腰が抜けたようにズルズルとその場に座り込んでしまった。
 それでも耳を攻めることは止めず、さらに舌を挿し込むとビクッと体を跳ねさせて


「あっ・・・マモッ・・ル!・・・やっ・・」


 『やめて』と言いたいのだろうが、言葉にならないみたいだ。必死で俺の腕から逃れようともがいても腕力では俺の方が強いから逃れられない。
 その間も耳への攻めはやめずに、舌の先端を窄めさらに奥へと挿し込み、顎を掴んでいた左手の人差し指と中指をフィディオの口を割り、銜えさせ口内を侵し始めた。


 「んっ・・・うぅっ・・ん・・・やっ・・」

 「フィディオ、気持ちいい?」


 耳に口をあて、囁くと目をきつく閉じ体を震わせていた。耳の後から首筋へゆっくりキスを落としながら、銜えさせていた指を抜くと唾液の糸が指とフィディオの口を繋いでいた。それを見ながらフィディオは、今にも泣き入りそうな声で


「もっ・・・やめっ・・・て・・」


 と、哀願して来た。
 フィディオの顔を俺の方に向かせて、『やめて・・・』と呟くその唇に優しくキスを落とした。


「ホントはキスをしたかっただけなんだけど、フィディオが可愛すぎるから止まんなくなっちまった・・・ごめんな」

「・・・・・・マモル・・こわい・・ょ・・」

「なんで?」

「ぁ・・・」


 フィディオは目を反らし、俯いて胸を抱き捕まえている俺の腕を両手でギュっと掴んで黙り込んでしまった。
 俺は小さく溜め息をつき、包み込むように抱きしめた。


「フィディオ、お前のことホントに好きだから大事に思ってるから、だからさぁ、もう少し・・・分かるよな」

「・・・・・・うん」


 恋愛に臆病な彼は、俺の腕の中で小さく『ごめんね』と呟き一粒の涙を流した。


 




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