愁生くんの


愁生くん:今にも崩れ落ちそうなボロアパートに住む貧乏大学生
焔椎真さん:色々あって身長が30cmくらいになっちゃった愁生くんの恋人



築数十年のボロボロのアパート。その住人である愁生くんは自分の部屋の扉の前でキョロキョロと辺りを窺っていました。
誰もいないことを確認すると、蹴っただけで開きそうなほど頼りない古びた玄関のドアを開けます。

「ただいま…」

ギイギイ煩いドアを閉めると小声で呼びかける愁生くん。
なぜ小声かって?壁がとんでもなく薄いため、大声を出すとお隣さんに迷惑がかかるからです。

「焔椎真…いた」
「…しゅーせー」

本棚の隅からひょっこり現れたのはお人形ほどのサイズの焔椎真さんでした。
白いハンカチにくるまってしくしくと泣いています。

「愁生のばか…遅いんだよ」
「ごめんな…思ったより手間取って」
「十瑚にはしゃべってないよな?」
「…おかげで変態扱いされたよ」

愁生くんは焔椎真さんのお洋服の調達に出ていたのでした。十瑚というのは愁生くんと焔椎真さんのお友達で、彼女が持っているお人形のお洋服を焔椎真くんのために何着か借りてきたのです。
変態呼ばわりされるのは大変不本意でしたが、焔椎真さんがこの格好のままで風邪を引いてしまうことの方が嫌ですし、理性的な問題でも大変困っていたので、愁生くんは頑張りました。

「愁生?疲れてるのか?」
「…ああちょっとね…」
「ごめんな愁生…ありがとう」

ちゅっと愛らしく自分の指にキスをする焔椎真さんに、愁生くんはどきっと胸が高鳴りました。
(抱きしめたい…でも潰してしまいそうだし…何よりハンカチ一枚って!か、感触がリアルすぎるんじゃ…!)
必死に誘惑と闘う愁生くんを他所に、るんるんとお洋服が入っている紙袋を漁る焔椎真さん。その嬉しそうな姿を見て、彼女が喜んでくれたなら良かったとしみじみ思っていたのですが、

「な、なんだよこれー!!」
「え」
「こんな…ひらひらふわふわな服、着れるかー!!!」
「焔椎真落ち着け、声!声大きいから、」
「愁生のばかああああ!!」

焔椎真さんの小さい小さい口を手で塞ぎながら、ひらひらふわふわじゃない人形の服なんてあるのか?!と愁生くんは泣きたくなりました。


end...?


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