SSLではありません


隣の席の風間くんは、よくわからない。
そもそも私が彼をよく知らないし、なんとなく話しかけづらい。風間くんがよく喋ってるのは、土方くんか原田くん。話してることまではわからないからそれくらいしか知らない。



「ではみょうじ」
午後の授業中、うとうとしていて話を聞いてなかったのに、芹沢先生に当てられて慌てて飛び起きる。どうしよう…!
「まさか寝ていたのでは有るまいな」
素直に寝てました…とも言えず、顔がだんだん熱を持ってくる。ヤバい…何すればいいの?このままじゃ外に出される…
「x=55」
不意に隣からぼそりと声が聞こえた。x=55…って言えばいいの?風間くんは相変わらず頬杖をついて、こっちを向かない。一か八かだ。
「…えっと、x=55…?」
「フン、寝てはいなかったようだな」
助かった…心の中で風間くんに感謝した。



「風間くん、さっきはありがと…」
私がそう言うと、風間くんは目を背けた。真っ赤で、きらきらした目。
「別に、大した事では無い」
「芹沢先生ほんと怖いからよかったー…お礼に何かあげる!何がいい?いちごみるく?チョコ?グミ?」
鞄からがさがさお菓子を取り出す私を見て、土方くんがやってくる。
「みょうじ、さっき寝てたろ」
「あっ、バレた?」
「たりめーだろ。…なんだこの菓子の量…お前どんだけ持ってきてんだ」
私と土方くんがわいわい言っている横で、風間くんが言った。
「別に、菓子など要らん 」
「えっ。でもほんと助かったし一応お礼としてっ…」
「じゃあ、」
風間くんが私の方を見る。やっぱり真っ赤で綺麗な目が、私を映す。
「俺と付き合え」
「「はっ!?」」
土方くんと私の声が重なる。風間くんは私のことをからかってるんだと思った。しかし、彼はずいっと私の目を覗きこむ。あ…逃げられない。
「なまえ」
風間くん、私のこと名前で呼んだ…もう頭の中がぐちゃぐちゃだ。これって告白なの?さっきとは違う熱が私の頬に浮かぶ。土方くんもいるのに…恥ずかしい…。
そして不意に、私の唇に風間くんの唇が重なった。みんな見てるかもしれないのに…やだ…やだ…
「やめ、て…」
私は気が付けば風間くんを突き飛ばしていて、涙がぼろぼろと落ちていた。唇は離れたけど、風間くんの私よりしっかりした体は動かなかった。真っ赤な目は何も私に告げていない。なのに、なのに…。
「っ…風間くんのバカ!」
その日は結局、風間くんと口を利かなかった。
こんなはずじゃない、ありがとうって言いたかっただけなのに、もうめちゃくちゃだ。