「総司あけましておめっと!」
日も昇ってない朝早くからチャイムを連打して、ずかずかと部屋に入ってきたのはなまえちゃんだった。僕は大晦日だからとかそんなことを気にする訳でもなく、昨日は眠くなったから早く寝た。布団を剥がされてぶるりと身を震わせる。
「よっ総司!」
「お前…寝正月にする気か」
「さっさと起きろ!初詣行くぞ」
「えっ…平助くんと一くんと土方さんまでいるの」
なまえちゃんは僕の呟きを無視してにこにこ笑いながら、有ろうことか土方さんにお茶まで出している。
「どうせなら二人がよかった」
やっぱり僕の呟きは誰の気にも留められなかった。へっくしゅん、くしゃみが部屋に響く。



ちゃりん、とお賽銭を投げて、二人して子どもみたいにお願い事をする。
「今年も無事に過ごせますように」
「今年こそなまえちゃんの胸が成長しますように…」
なまえちゃんの小さな手が伸びて、僕の腕をべしっと叩く。
「私の胸は小さくないし!」
膨れっ面でむきになって否定するなまえちゃんがおもしろくて、ますます弄りたくなる。
「なまえちゃんのツンデレが治りますように」
「私ツンデレじゃないし!もう!」
やっぱり小さな手が僕を叩くけど、全然痛くない。あ、鼻が赤くなってる。かわいい。なまえちゃんが頬っぺたに冷えた手を当ててくるから、僕はひっ、と間抜けな声を出した。
「総司!なまえ!後ろに人がいるんだぞ」
「はあい…すいません…」
「あんたらには付き合えん…」
「お前らほんと仲いいよなあ…」
土方さんに呆れられても一くんにバカにされても、別に構わないや。うらやましいでしょ、平助くん。
不意に僕より小さな手が、僕の手を包むように触れた。すごく冷たい。それでも、この手を離したりしない。温めるように握り返す。
「総司、今年もよろしくね」
「こちらこそ、よろしくね」
二人して顔を見合わせて笑った。


ふたり/120101