「起きて」 「うう…、あと5分……」 「起きないと目にレーザー当てるよ」 ……。 はっ!? 「危ないじゃない!!」 「だったら早く起きなよ。もう9時過ぎてるんだけど」 なんてことだ……朝から早速おめめを持っていかれるところだった。危険すぎるこのロボット。飛び起きたせいで頭が痛い。二日酔いが残ってる。肩もバキバキ。大体なんでロボットが私のベッドで寝て、私がソファーで寝てんの。 「講義昼からだし、あと3時間寝る……」 「何言ってるの。服買いに行くよ」 「〜〜〜もう!!わかったよッ!!どうせ行かなかったら嫌がらせするんだろ!」 「当然だよ」 とてもじゃないけど、こいつが私に仕えてるなんて言えない。むしろ私がこき使われてる。ほんと、誰だよこんなもの持ってきたの……。 「ほら、早く着替えて化粧。君のすっぴんとか見たくないから」 「うるせえ!!!」 △▼△ 「えっ、知らない?」 「うん…」 服を買いに出かける前にマンションの管理人さんを尋ねると、笑顔で迎えてくれた。優しいおばちゃんだ。 「私の部屋にでっかい段ボール箱が……」 「でも私が置いたんじゃないのよ…それ」 どうやら管理人さんはあの段ボール箱については何も知らないらしい。かなりぞっとする。だってそれって……誰かが勝手に私の部屋に入ったってことでしょ…? 「わざわざありがとうございました……ほんと、すみません」 「いえいえ、また遊びに来てね」 警察に言わなくていいんだろうか。でも…何て言うの?何か盗まれてるわけでもないし、まさか自分の部屋に全裸のロボット置いていかれました、なんて……言えるわけない…。ただの痴女扱いされること間違いなしだ。あーあ…どうしよう。 △▼△ 「ただいま」 「おかえり」 「ほら、服」 「うわ、見事なまでに予感的中。全部ユニクロ」 「ユニクロを馬鹿にするやつは全裸でいいよ」 ロボットなんだから布があるだけ有難いと思え!バカヤロー。 「あのさ、ソウジ」 「何?」 「あなた、どうやってここに来たの」 私が問うと、ソウジは笑って言った。 「言ったでしょ。僕を作った人は、君が寂しいことを知ってた。だから彼は僕をここへ連れてきた」 「いや、そうじゃなくてね、」 「詳しいことは説明できないよ」 だって僕、ロボットだもん。てへぺろ☆、じゃないから。都合の良いときだけロボットになりやがって。どこの星に服着たがるロボットがいるんだよ。 「まあ、いいんだ」 「何が」 「君が、僕がいることで寂しくなくなれば、それで」 ……そりゃあまあ、確かに。昨日から話し相手ができて?寂しさも紛らわされて?もう好きだった男の顔も忘れつつあるけど。 でもなあ……だからといって、ソウジのおかげだと言うには何だか気が引ける。 「ちなみに僕、恋愛機能も搭載してるから」 「ふん、冗談」 「何なら彼氏設定もできるけど」 「……あほらし。大体ねえ、私理系男子苦手なの。文系の女捕まえて、馬鹿にしたような態度が許せない。そんな理系の男が作ったロボットなんて、」 実におもしろくない。と、湯○先生の物真似をしてみる。 「そう。じゃあ君の言う理系男子と君と、どちらが勝つか、見物だね」 ソウジがにやりと笑った。上等よ。少なくとも私はロボットに惚れちゃうほどの天然ちゃんではない。むしろリアリスト。ロボットに感情があるだなんて、考えるだけ笑い話。 「じゃ、もう私大学行くから。留守番よろしく」 「いってらっしゃい」 △▼△ 「……というわけよ」 「それ、大丈夫なの?」 大学のカフェテラスで、友人の千と二人、ランチタイム。昨日からの出来事をすべて千にしゃべり倒した。 「大体何なのあのロボット。かなりムカつく」 「まあ、話を聞く限りではあんたが下僕状態ね」 「そうよ全く!でもほら、キレたらどんな反撃されるか考えるとさ……今朝も視力を壊滅させられそうになったし……」 「でも理系男子の全てがダメって決めつけるのは早計だわ」 「いや、私にはもう…無理。ソウジ造った人も例に漏れず」 ふふ、と千が笑う。私は真剣なんだけどなあ。人生かかってるのに。 「それでも、失恋したなまえが1日で立ち直るんだもの。普段なら復活に1週間はかかるわ。だから余程優れたロボットなのよ、ソウジさん」 痛いとこをついてくるな…。でも私は決して折れない。折れないぞ……! 「絶対、ソウジを造ったやつ見つけて造り直させてやるんだから」 /機械に感情はありません |