「あ、ごめん平助。僕ちょっと呼び出し」
「お前まさかまた告白されんのかよ!?確かこないだも…」
「知らないよ。こっちだって迷惑。どうせ断るし」
「んだよ総司ばっかりー俺にも少し回せよ!先に食堂行くからな!」
昼休みになってオレの腹が限界を超えて暴れまわっている今、総司を待って一緒に食堂に行くという選択肢はない。何だよ総司ばっかモテやがって…オレには出会い無しかよ!
食堂、早く行かねえと混むんだよな。走るか。そう思って地面を蹴ったときだった。視界の端に女子の塊が見える。しかし何かおかしくねえか?一人を中心に囲まれてるような…しかも、中央にいる女子には見覚えがある。なんつったっけ?みょうじなまえだっけ?総司のおとなりさんだよな?
「…っ、私ほんとに沖田さんとは何も!」
「嘘言わないでよ!あなたと沖田くんが一緒に歩いてんの見たんだから」
なるほど、そういうことか。話をきいてわかった。オレの足は自然と止まって、既にそっちの方向に動いていた。
「嘘じゃねえよ。コイツはオレと付き合ってんだ」
「!?藤堂君…」
なまえの手を取って、輪から連れ出す。あーあ、食堂…こりゃラッシュ避けられねえな。
「それより、一人に数人でこんなダッセーことして楽しいか?」
囲んでいた女子たちを一瞥して、オレはびっくりした顔のなまえの手を取ったまま食堂に向かった。



「ありがとうございました。今日は千鶴いなくて…」
「気にすんなって。あっ、こっちこそいきなり付き合ってるとか変なこといってごめんな!!」
今にも泣きそうななまえに焦って頭を下げると、やめてくれと言われた。
「藤堂さんと、お付き合いする人は幸せだなって思っちゃって」
そう言って笑ったなまえの傷ついたような顔。見てられねえ。
「な、もう忘れて飯食えよ。お前強かったな。オレだったら絶対泣いてた!」
「…ぷっ」
「なっ、お前…人がせっかく励まそうと…」
「あはは、大丈夫です。もう平気、藤堂さんのおかげ」
「平助でいいよ。オレもなまえって呼ぶから」
「じゃあ、平助先輩」
なまえの表情はさっきと違ってもう明るかった。よかった。オレもそれに応えて笑った。
「ごちそうさまでした。おごってもらっちゃって」
「ああ、いいよ。また一緒に食おうな」
去っていくなまえの背中を見送る。すると、ちょうど向こう側から総司が歩いてくるのが見えた。総司となまえがすれ違う。オレはなぜか二人から目を逸らさずにはいられなかった。
「…おーい総司、こっちこっち」
「ああ、平助くん」
「告白どうだった?」
「別にいつもと同じ。それよりなまえちゃんが話しかけても僕の顔も見ずに走って行っちゃったんだけど…なんでだろう。平助知らない?」
「なぁ、総司」
「何?僕が君にきいてるんだけど」
イライラしたような顔の総司に、オレは自分で思ってたよりも冷静に言った。
「あんま、なまえにちょっかいかけんなよ」
オレはまたも目を見開いた総司から目を逸らさずにはいられなかった。


(めんどくせえええええ!つか総司怖え!)