隣の部屋に引っ越してきた子、名前はみょうじなまえちゃん。首の辺で揺れるボブヘアーが印象的。顔も雰囲気もかわいいよ。
でもなにより、すごく面白い子だ。今まで会ったことないタイプ。こないだは「北斗の剣」見て泣いてたし、その前は「うたの☆プリンセスさまっ♪」だっけ?それ見て悶えてた。要するに俗に言うオタク、ってやつかな?でも回りにそんな子がいたことないし、よくわからない。興味はある。



「やあ、なまえちゃん」
「おっ…沖田さん…」
平助くんと学内の食堂に行くと、ばったりなまえちゃんと会った。同じ大学だってことは知ってたけど、会ったことはなかったなあ。なまえちゃんの隣の女の子はびっくりしたまま僕と平助くんを見ている。まあ…そうだよね。自分で言うのもなんだけど、僕たち顔は悪くないから。なんか王子とか言われてるみたいだしね。
「かっこいい」ってきゃいきゃい騒ぐ女の子は好きじゃない。結局それって顔しか見てないってことでしょ。女友達だと思ってた子から告白されることだってあったけど、結局理由は全部顔だった。そんなときはこの顔に生まれてきたことがちょっぴり恨めしくなる。
「はじめまして。なまえちゃんと同じ家に住んでる沖田総司です」
「あーっ!大声で誤解を生む発言はやめてください!」
なまえちゃんが焦って僕の口を塞ごうとするけど、背が足りてない。ふふ、この子は自分で面食い発言してるわりに、僕には媚びないよね。すると、平助くんが突然思い出したようになまえちゃんに向かって言った。
「お前があのおとなりさんか!」
「……え、どうして私のこと」
平助くんがまじまじとなまえちゃんを見つめる様子に思わず吹き出す。そういえば前になまえちゃんのこと話したんだった。
「実際に会ってみてどう?」
「うーん…総司から聞いてたよりマトモだな!」
「ちょっ…何言ったんですか沖田さん!」
「何も言ってないよ。それよりそっちの子はお友達?ごめんね、騒いじゃって」
「あっ、いえ…」
なまえちゃんの隣にいる子は、唖然としたまま僕らの会話の横に突っ立っていた。なまえちゃんがその子の腕を引っ張って歩きだす。
「行こう千鶴…」
「う、うん。失礼します」
「またなー」
「じゃあなまえちゃん、また家でね」
「だからあああ!誤解を招くからやめてください!」





「はあああ…ごめんね千鶴」
「まさかなまえが学園の王子沖田さんと知り合いだとは誰も思わないだろうね…」
「ただのおとなりさんだよー…」
見るからに疲れてるなまえ。まあ仕方ないよね。沖田さんはきっとなまえのプライベートをやたら掴んでるし、仮に隣に住んでることが知れたら大勢の沖田さんのファンに何されるかわからない。しかも沖田さんはなまえのことを結構気に入ってるみたいだし、これは厄介。
それに、噂だけど沖田さんは遊び人だと聞いたこともある。
「千鶴と住みたい」
「あはは、でもなまえ掃除とかしないでしょ?」
「するよ!ひどい!」
しがみつくなまえの手をぎゅっと握り返したら、なまえは抱きついてきた。



(厄介な学園生活)