「いらっしゃいませ」 いよいよスパイ開始。ドアを開けて店内に入ると異様な程にきらきらしていた。眩しい…! 「こちらへどうぞ」 青い髪の店員さんが席へ案内してくれて、メニューを受けとる。すかさずチェック。ケーキは季節限定ものと、そうでないもの。紅茶珈琲も、メニュー数はうちと同じぐらい。 「おすすめはどれですか?」 「そうだな…全部と言いたいとこだけど、個人的にはこれっすね!」 「…"ほうせきばこ"?じゃあこれと、ダージリンティで」 「はい、少々お待ちください」 周りの様子をこっそり伺うと、朝なのにお客さんはかなり多い。ほぼ満員だ…。奥のキッチンがガラス越しに見える。パティシエ2人とホール2人かあ。他のお客さんの頼んだケーキもちゃんとメモ。さすがにフレーバーまではわからないな…。 「お待たせいたしました」 声のする方へ振り向いて驚く。すごい美少女!!銀のトレイに負けず劣らずぴかぴかに磨かれた爪。艶々の髪の毛。 「"ほうせきばこ"とダージリンです」 「ありがとうございます…!」 「ごゆっくりどうぞ」 にこりと微笑んだ店員さんにうっとりしながら、ケーキを見る。箱の形のケーキの中にチェリーボンボンが入ってる。なるほど、ケーキを綺麗に見せるために照明が明るいんだ…。きらきら光って見える。ぱくり、一口食べた。 「!!」 * 「というわけです」 帰って来てすぐに再びミーティングが行われて、私はメモに取っていたことを、詳しく話した。 「じゃあ、内装は○。品数はうちと同じぐらい、味は◎、ってことだな」 「あ、あと女性の店員さんが綺麗すぎました」 「それは多分鈴鹿さんだね。新店舗には必ず少しの間いるから」 「沖田さん、知ってるんですか!?」 「あのカフェね、僕たちの知り合いっていうか…昔からのライバルが経営してるんだ」 「そうなんですか…」 「うちは一軒しか店が無いし、今までは放っておいたんだが……わざわざ俺達の近くに出店してきたからには」 宣戦布告と取って間違いねぇ、と土方さんの目が光る。気づけば私以外の人は皆同じ表情をしていた。 「しかし、今度の店舗にはあいつはいないのか」 原田さんが言ったことに、皆顔を上げる。 「なまえ、パティシエの顔を見なかったか」 斎藤さんに問われて思い出す。そうだ…! 「見ました!お会計の時に少しだけだけど、金髪で赤い目の…」 目が合って、その真っ赤な眸が、チェリーボンボンみたいだって思ったんだ。 (まるで酔いそうな) |