「いらっしゃいませ」
いよいよスパイ開始。ドアを開けて店内に入ると異様な程にきらきらしていた。眩しい…!
「こちらへどうぞ」
青い髪の店員さんが席へ案内してくれて、メニューを受けとる。すかさずチェック。ケーキは季節限定ものと、そうでないもの。紅茶珈琲も、メニュー数はうちと同じぐらい。
「おすすめはどれですか?」
「そうだな…全部と言いたいとこだけど、個人的にはこれっすね!」
「…"ほうせきばこ"?じゃあこれと、ダージリンティで」
「はい、少々お待ちください」
周りの様子をこっそり伺うと、朝なのにお客さんはかなり多い。ほぼ満員だ…。奥のキッチンがガラス越しに見える。パティシエ2人とホール2人かあ。他のお客さんの頼んだケーキもちゃんとメモ。さすがにフレーバーまではわからないな…。
「お待たせいたしました」
声のする方へ振り向いて驚く。すごい美少女!!銀のトレイに負けず劣らずぴかぴかに磨かれた爪。艶々の髪の毛。
「"ほうせきばこ"とダージリンです」
「ありがとうございます…!」
「ごゆっくりどうぞ」
にこりと微笑んだ店員さんにうっとりしながら、ケーキを見る。箱の形のケーキの中にチェリーボンボンが入ってる。なるほど、ケーキを綺麗に見せるために照明が明るいんだ…。きらきら光って見える。ぱくり、一口食べた。
「!!」



「というわけです」
帰って来てすぐに再びミーティングが行われて、私はメモに取っていたことを、詳しく話した。
「じゃあ、内装は○。品数はうちと同じぐらい、味は◎、ってことだな」
「あ、あと女性の店員さんが綺麗すぎました」
「それは多分鈴鹿さんだね。新店舗には必ず少しの間いるから」
「沖田さん、知ってるんですか!?」
「あのカフェね、僕たちの知り合いっていうか…昔からのライバルが経営してるんだ」
「そうなんですか…」
「うちは一軒しか店が無いし、今までは放っておいたんだが……わざわざ俺達の近くに出店してきたからには」
宣戦布告と取って間違いねぇ、と土方さんの目が光る。気づけば私以外の人は皆同じ表情をしていた。
「しかし、今度の店舗にはあいつはいないのか」
原田さんが言ったことに、皆顔を上げる。
「なまえ、パティシエの顔を見なかったか」
斎藤さんに問われて思い出す。そうだ…!
「見ました!お会計の時に少しだけだけど、金髪で赤い目の…」
目が合って、その真っ赤な眸が、チェリーボンボンみたいだって思ったんだ。



(まるで酔いそうな)