「ったくよー!なんだって31日に大掃除なんだよ!」
「ま、まあまあ!一年を爽やかに始めるための準備だよ」
「それよりケーキの仕込みやりたかったよ……」
オレたちは今、土方さんに言い付けられてお店の片付けをしている。なまえはいつもと変わらず真面目に床を掃き、棚の埃を拭き、絶対長い間使われていなさそうなお皿まで出してきて洗っている。あり得ねえ!
「おま、そんなことまでやってたらキリがねぇよ!!今日中に終わらないどころか徹夜で仕込みだぞ!」
「だって……斎藤さんに頼まれたんだもの」
はじめくんに掃除の指揮は任せちゃいけない。今頃は物置の中ですらピカピカになっているはずだ。しかも仕込みは、左之さんと何故かホール担当の総司に任されている。不満を言おうにも肝心の土方さんは1週間前から仕入れのために世界を回っていて。
「ちぇー」
「何がちぇー、なの?」
「沖田さん!仕込み終わったんですか?」
「それがさ、僕が雑だからって左之さんに追い出されちゃった」
「いや…てへぺろー、じゃねえよ…」
「ま、仕方ないから掃除の手伝いしてあげる。なまえちゃん、僕は何をしたらいい?」
するとなまえは土方さんの字だと思われる手書きの紙を取り出して言った。
「沖田さんはご自分のロッカーの中を片付けるようにと…」
「ええ…めんどくさい…代わりに平助くん、頼んだよ」
「はああ!?」
なんてことだ…!オレの仕事が増えるという想定外の出来事が…。
「平助くん忙しいもんね、沖田さん、代わりに私がやってもいいですか?」
「……冗談だよ。女の子にロッカーの片付けやらせてどうすんのさ」
それでも、土方さんの手書きメモをきらきらした目付きで眺め、帰りをわくわくしながら待つ姿を見ていると、ちょっと悔しい気分。なまえは完全に土方さんのものなんだな、と実感せざるを得ない。あーあ、俺にも彼女いたらなぁ。
そんな風に思うのは俺だけじゃないはず。そう思って隣をちらりと見やると、やっぱり総司も同じことを考えていたのか、どこか呆れた様子で、ふう、と息を吐いていた。