初代守護者×雨月
!皆あほの子、晴が苦労人




「ふっ、うえ、あらうでぃどののばかっ…!」
「……で?我が雨がこんなにも泣きじゃくっている理由は勿論お前なのだな、アラウディ。」
「僕のせいじゃないよ。」
「しらばっくれてんじゃねぇぞ、そんなに射抜かれてぇか。」
「どうしたの雨月、オレ様に言ってみな。慰めてあげ、」
「抜け駆けはよくありませんよ、ランポウ。」


ああ、また始まったのかと俺は人知れず究極に深い深い溜息を零した。会議の時間になっても一向に現れないアラウディと雨月に気付いた誇り高きボンゴレ守護者とその主君、一斉に席を立ちあがり駆け抜けた廊下の先、蹲り泣きじゃくる雨の守護者の隣で佇むアラウディを見つけたのがつい先刻。誰がどう見ても雨月がえぐえぐと泣き続ける原因はアラウディであり、常日頃から雨月を自分のモノにすべくと奮闘する彼らが此処で対立を見せるのは至って日常なのである。隙在らばと目を光らせて火花を散らす野獣共の真ん中、未だ一向に泣きやむ様子を見せない雨月が些か哀れに見えた。


「雨月、アラウディに何をされた?返答次第で俺が奴を解雇処分にしてやるから安心して話せ。いや寧ろどんな返答で在ろうと解雇にしてやるぞ。」
「いいぞジョットもっとやれ。」
「黙れG。職権乱用なんて良い度胸じゃないか、お望みなら解雇される前に君を逮捕してあげるよプリーモ。」
「可愛い私の雨月、泣きやみなさい。大丈夫、私が傍に、」
「やだやだ、あんたこそ抜け駆けだものね。どさくさに紛れて雨月を口説かないでくれる?」


笑顔で飛び交う穏やかな罵声の中、ぽろぽろと涙を零す雨月と目が合った。地べたに深く据え付けた腰を上げ、ゆったりとした歩調が向かう先は俺。幸いにもと言っていいものかそれには気付くことなく冷たい戦争を続ける守護者を背景に、俺の目の前でぴたりと足を止めた雨月の頬を伝う涙を拭う役目は本当に役得なのかも知れないとこっそり思った。


「で、実の所お前は何でそんなにも泣いて居るのだ、雨月。」
「っ、あらうでぃどのが、わたしにせっぷんを…いぜんじーどのが、せっぷんするとこどもができるとおしえてくださったゆえ、っ…ふえ、わたしにも、あかごがやどってしまうのでござろうか…っ、」


ぴしり。俺達を取り囲む空気が音を立てて凍り付いたことに雨月はきっと気付いていないのだろうけれど。氷の微笑を携えて皆が見据えるのはアラウディ、涼しげな顔で鼻を鳴らしたこの男は悪びれる様子すらない訳で。


「君が馬鹿な嘘を教えるから雨月があんなにも泣いてるんじゃないか、あの子は純粋なんだから変な嘘を吹き込まないでくれるかな。」
「つーか問題はそこじゃねぇよクソ野郎、お前雨月にキスしたって…?あ?」
「解雇するより先に一度貴様には制裁を加えねばならんようだな、アラウディ。それからG、お前は後で俺の部屋に来い。」
「今だけは休戦しといてあげる、デイモン。まずはあいつを消すのが先だものね。」
「ええ、そうですねランポウ。今だけは協力してあげましょう。」


銘々が武器を片手にアラウディへと笑いかける、勿論目は全く笑って居ない。そんな守護者プラス主君を尻目に清々しい程に颯爽と向かう歩みは俺、否俺の目の前で泣いている雨月。俯く顔に寄せた唇は、今のこの状況を作りだすきっかけになったことも忘れてしまったのか、(いやあえて忘れた振りをしているのか、)再び雨月の唇に可愛らしいキスを落とした。空気は音を立てて今一度凍り付く、大きな瞳を目一杯に開けて問題を引き起こした張本人を見据える雨月の髪を優しげな表情が撫でた。


「ごめんね、雨月。大丈夫だよ、子供ができたら僕がきちんと責任をとってあげるから。」
「あらうでぃ、どの、」
「いやいやいや目を覚ませ雨月何ときめいてやがんだっ!テメェは俺の嫁だろうが!」
「黙れG。雨月、お前は俺のところに嫁げ。幸せにしてやる。」
「こんな馬鹿共と結婚なんてやめときなよ、オレ様が娶ってあげるものね雨月!」
「とりあえず君は雨月から離れなさいアラウディ、彼が私の嫁になることは前世から決まっていることなのですから!」


こうなってしまっては暫くほとぼりも冷めないだろう。窓の外で可愛らしく囀る小鳥の歌を耳に、もはや日常と化した非日常に身を置きながら俺はもう一度心から究極に深い深い溜息を零した。





110406
総受け書くのは苦手なんですが楽しかったです。雨月はみんなのアイドル!Gの扱いがひどいのは仕様です。

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