ツキヒコ×ヘッド



「仮面を付けて居ない貴方は少し、何時もと違うような気がします。」
「俺は何も変わらないよ。」


ふわり、漂う甘ったるい香りは多分彼の含んだミルクティーの所為だけではなかった。彼自身無意識に纏う甘さ、惹きつけられて堕とされて、気付いた時にはもう手遅れ。もう何時から好きになっていたのかさえ分からなくなる程長い間、俺はきっとこの人に恋をしていた。


「俺は今の貴方の方が好きですけどね。」
「変わらないのにね、何も。」


机の中央で山を作る角砂糖に彼の細い指が伸びた。もう温くなってしまったミルクティーにはきっと、溶ける筈もないのに。ぽちゃりと音を奏でて沈んでいく砂糖の塊を見つめる瞳が何だかとても儚く見えた。


「俺、君が好きだよ。」
「嘘ですよね。」
「うん、嘘。」


ミルクティーよりもずっとずっと甘くて白い、純粋な嘘。どうしても溶けない砂糖のように、俺は彼に飽和する方法を知らなかった。


「俺、甘いの駄目なんだよね。」
「そうですか、なら、」


誘う唇は本当に意地が悪くて、けれどそれを知っているくせに拒絶もできない俺が本当は一番愚かなんだろう。レモンティーの甘酸っぱさを残す唇も、きっと彼のそれとは上手く溶けあってなんてくれないんだろうけれど。(それでも、。)


「ふふ、やっぱり甘いよ、すごく。」


狡い甘さに浸されて、溶かされて。叶わないなあ、今日も俺はこんなにも貴方に恋をしているだなんて。





110328
あれ、お茶…?して…してますよ一応!とりあえずごめんなさい。

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