獄寺×ギ山本



きらり。こぼれる笑顔にそれはもうどうしようもないくらい、悔しいほどに恋をしていた。


「ごくでら!」


名前を呼ばれるたび、笑いかけられるたびに跳ね上がる心臓。ともすればこぼれ落ちそうになる「すき」の言葉は悔しいから言ってやんねえけど。優しい体温が触れた、多少強引に引き寄せるとすっぽり腕の中におさまるこいつが愛しかった。


「どした?」
「別になんでもねえよ。」
「ふは、変なごくでら。」


くすくすと笑い声は腕の中、伝わる心音が心地いい。ああ、お願いだから伝えないで欲しいよ、お前とこうして触れあっているだけで馬鹿みてえにうるさい心臓の音なんて。だってまるで俺ばっかりがお前を好きみてえで、なんだかそれはやっぱり悔しくて。ふわり、抱き締しめかえす腕はどうせ俺がこんなことを考えているだなんて気付きはしないと思うんだけど。


「おれさあ、ごくでらすきだよ。」
「、んだよ、今更。」


やわらかい唇が触れた。どきん。(ああ、。)どうやら俺はこいつのことを見くびっていたらしい。互いに溶けあう心臓の音は同じリズムで、ぼすんと俺の胸へと顔を埋めた山本は多分絶対全部ぜんぶをわかっていた。


「おまえってずるいよな。」
「ごくでらのがずるいよ。」


こんなにも俺はこいつに恋をしていて、それから多分こいつもそんな俺に恋をしていて。やっぱり悔しくて、やっぱりこいつは全部をわかっているようでほんとは何もわかっていないのかもしれなくて。だけど溶けあう心臓だけはほんとうで、すきだとわらうこいつを俺がすきだということだけは絶対に変わることのない真実だった。


「すきだ。」


きらり。幸せそうにわらうおまえに、こうして俺はまた何度だって悔しいほどに恋をするんだ。





110314
乙女寺隼人。なんだかよくわからん感じですが、甘い話…になってたらいいなあ(ごにょごにょ)

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