ツキヒコ×ギンタ
!+タケオとちょっとヘッド




「ほんと意味わかんない。死ね。」
「それはさすがに言いすぎだと思うけど!」


(あーあ、まあた始まった。)
最早日常となりつつあるその光景に僕は一人溜息を吐いた。一人声を荒げるツキヒコ先輩の横で冷静にダーツを投げるギンタ先輩の姿は最早デフォルト、テンプレートだと思う。それから、可愛い後輩であるこの僕が無条件でその喧嘩に巻き込まれてしまうということも。他愛のない喧嘩、というよりはいつもツキヒコ先輩が一方的に怒っているだけのように見えるそれに。


「だからさ、あの女の子は絶対ギンタを好きなんだって!だから話しないでって前にも言ったじゃん!タケオも聞いてたよなっ!」
「なら俺が誰と話そうと何をしようとお前には関係ないって何回も言ってるでしょ。なあ、タケオ?」


(いちいち僕に同意を求めるのはやめてください。)
ギンタ先輩の細い腕が僕の腰を抱くように絡みついた。男のくせになんかいつも良い匂いがするのがちょっとムカつく、愛想笑いを浮かべる僕に向かってツキヒコ先輩の罵声が飛んだ。


「あっ、ちょっ!俺のギンタとべたべたしてんじゃねぇよタケオ!」
「ばあか、何時誰がお前のもんになったって?な、ターケオ。」


(勘弁してよ。)
耳元で囁く甘い声、こんなの聞いたら馬鹿な女はきっと一発でオチちゃうんだろうな。心配になってしまうツキヒコ先輩の気持ちは理解できなくもないけど、だからってそれに僕が巻き込まれるのはホントお門違い。ツキヒコ先輩の怒りの矛先は何時の間にか名前も知らない女から僕に、その状況を愉しむみたいに笑うギンタ先輩は確信犯もいいとこだ。嗚呼誰か哀れなタケオくんに慈悲の手を、祈るのと同時部屋に響いたその声は我らが本当の代表様、


「そろそろタケオくんを解放してあげたらどうk、」
「あんたはさっさと気多の巫女んとこでも行って下さい。何時までもへこまれてるとウザいんで。」


(一瞬でログアウト…!)
ギンタ先輩の爽やかな毒を受けてすごすごと帰って行く後ろ姿はまたあの夕日の見える丘へ向かったんだろう、ホント何しに来たんだあの人。もう誰かに助けを求めるのは無意味だと悟った僕を、それでもギンタ先輩の腕は解放してくれそうにもない。とってつけたような笑顔でじりじりと近付いてくるツキヒコ先輩の目が完全にイってる。もうホントに勘弁して下さい。命の危機すら感じ始めた僕の隣で、余裕を崩さないギンタ先輩がにやりと一つ笑った。


「俺ちゃんとお前のこと好きだよ、ツキヒコ。だからそんなに妬くなってば、可愛い奴。」


(もうホント帰らせて下さい。)
この人はツキヒコ先輩を飼い馴らすことに関しては本当に天才なんじゃないかと思う。ギンタあいしてるっ!なんて馬鹿みたいに叫んだバカヒコ先輩が僕ごとギンタ先輩を抱きしめるのと同時、僕は今までで一番深い深い溜息を一つ吐き落とした。





タクミ・タケオの憂鬱





110310
実はタケオ→ギンタでもおいしいとおもいました!まる!

第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -