カイジ×佐原



頭の中にこびりついて離れないのは満面の笑顔。決まって木製の扉を二回叩き、俺の返事を聞かないままにずかずかと部屋に入り込むお前は何時だって馬鹿みたいに笑っていた。


「カイジさん!」



無遠慮に俺の中へと侵入する声。一人を望んで居た、これからも独りで過ごすものだと思って居た。誰かと過ごす温もりを知った心臓は、きっともう独りじゃあ上手く鼓動を刻むことは出来ないから。何時しか俺の中へと居座って、俺に寄り添うように生きていたお前はなのに何時の間にかそこから居なくなって居たのに。


「佐原。」
「佐原。」
「佐原、」


木製の扉。ノック音。もうあの無遠慮な優しい声が俺を呼ぶことはなくて。居なくなってから気付くお前の大切さ、なんて馬鹿げている。(だって本当はずっと気付いて居たんだろう。)本当はずっとお前が好きで、けれどそれを認めたくなくて。何時か、言ってやるつもりだったんだよ。俺だってお前が好きだよ、なんて。(なのに。)(、だって、この愛しい日々の終わりなんて一体誰が予想できた?)(ずっと、続くと思っていたんだ。)


「さはら、」


好きだよ、佐原。こんなにも好きなのに、記憶の中のお前がどんどんと薄れていく。馬鹿みたいな笑顔と、俺を呼ぶ声と、それから目を閉じれば聞こえるノック音。何時かきっとそれすらも消えてしまうんだろう。なあ、佐原、


「はやく、会いにこいよ、」


ふわりと絡みつく匂い。顔を上げるとお前が居ただなんてベタな展開が本当に在ってくれたらどれだけよかったのに。お前の残り香も何時か本当に消えてしまうんだろうか。(さはら、)(すきだよ。)





忘れかけた恋の行方
(全て全てを忘れてしまう前に、どうか、)





title...Memory Girl

110220

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