G×雨月



何時も何かを見透かすような紅玉の瞳は只真っ直ぐ咎めるように私を見据えて居る癖に、限りなく優しさに近い感情と溶け合って甘やかに私を責める。嗚呼、叶うならば其の目で私を見ないで欲しいのです、でないときっと何時か私は其の深い深い紅色に殺されてしまうから。


「なあ、雨月。」
「何で御座る。」


優しい五指が頬を撫でた。ほら、また其の優しい紅玉は奥に奥に押し込めて置いた私の感情を掬い出す。


「テメェ、何時もなんでそんな泣きそうな面してんだよ。」


細くて長い指先が私の目尻を撫でた、たった其れだけの行為が涙腺を優しく刺激する。一体御主の其の瞳に映る私はどんな顔をして居るのだろうか。押し殺して居たつもりだった、気付かれて等居ないつもりだった。其れでも、


「、御主の気のせいでは御座らぬか。」
「嘘、だな。」


異国の地で過ごす不安も、人を殺める時の虚しさも、きっと何時も私の胸の片隅で確かに息付いて居た。虚勢を張らねば到底やって行けなかった、だから只笑って居た。(でもほんとうはきっとなきたかった。)ねえ、御主は一体何時から気付いて居たのですか。優しい両腕に包み込まれる。


「泣きたいなら泣けよ。俺が許す。」


泣きたくて、でも泣きたく無くて。必死に嘯いて来た虚勢が音を立てて崩れるような気がしたから。けれどぼろぼろと壊れたように零れ落ちる涙はもう止まってはくれない。狡い人なのです、御主は。精一杯の虚勢も、強がりも、どうか気付かないで居て欲しかった。そうしたらきっと其の優しさに縋らずに生きて行けたのに。


「テメェが泣きたい時は傍に居てやるよ、馬鹿野郎。」


優しい紅玉に映る私は今、一体どんな顔をして居るのでしょうか。本当は死んでしまいそうな程に嬉しくて、また壊れてしまった涙腺を優しく溶かす其の瞳は。





(きっと私は何時か本当に、其の優しい瞳に殺されてしまうのです。)





title...深爪

110209

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