臨也→新羅←静雄
!来神時代




感じたのはただひたすらに、殺意。これほどまでに自分の中に、他人に対する明確な殺意が生まれたのは初めてかもしれない。(今、あいつは何をしていた?)夕焼けに染まる教室の中、机に俯せながら夕日に溶ける新羅に男は口付けた。


「てめぇ、何してんだ。」
「あーあ、見られちゃった。シズちゃんこそ何でこんな時間に、」
「答えろよ。」


男は、臨也の野郎は白々しく肩を竦める。そんな仕種にすらも苛立って壁を殴りつけるとぱらぱらと壁が剥がれる音がした。臨也が笑う。ただでさえ俺の中にはっきりと浮かび上がる殺意がその質量を増していく。


「見てたんなら俺が答えなくても分かるんじゃないの。キス、してたんだよ。」
「新羅は、てめぇのもんじゃねぇだろ。」


まるで恋人に触れるように優しく、眠る新羅の髪をさらりと撫でて臨也は愛おしそうに目を細めた。ぱちん。殺意に針が突き刺さる。静かに破裂したそれと同時に気付けば俺は臨也の胸倉を掴んで、その不快な笑みを浮かべる顔に拳を振り下ろそうと、


「何でそんなにキレてんのかしんないけどさあ。別に新羅はシズちゃんのものでもないでしょ。」


にやり、笑う臨也に、俺は何も言葉を返すことができなかった。震える拳が行き場を見失う。こいつの言うことが全て本当だったから。一番大嫌いなこいつが、新羅に口付けていたというそれだけで俺が勝手に逆上していただけだ。そうだ、だって新羅は、


「新羅は誰のものでもないよ。強いて言うならあの同居人のものなんだろうね。」


臨也を掴む手を荒々しく解放した。八つ当たりはよしてよ、と、白々しく笑う臨也と同時に新羅に視線を落とす。むにゃむにゃと口ずさむ寝言は顔すら知らない同居人の名前に、行き場のないどうしようもない苛立ちだけが蓄積されていくような気がした。





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