シャマル×山本



白で統一された部屋の中で山本の黒い髪はよく映える。薬品臭いベッドに横たわる黒髪に夕日が落ちてもう、夜はすぐそこだ。なあ、声をかける。反応はない。けれどどうせ何時もの狸寝入りなんだろう、こいつが大好きな部活にも行かずこうして居るときはたいていがそうなのだ。なあ、もう一度声をかけた。ようやく俺を振り向いたその色素の薄い瞳は泣いているようにも見えた。


「もう時間だ、帰れ。」
「やだ、帰りたくない。」
「わがまま言ってんじゃねぇよガキ。」


ぼふんと柔らかい音がして山本の顔が枕へと沈む。駄々をこねる髪をがしがしと荒っぽく撫でるとくぐもった笑い声が擽ったい。ずっと、この時間が続けば良いのに。らしくもない馬鹿げた考えが叶う筈もないんだ。夜が来る。鳴り響くチャイムの後に広がった静寂、なるべく優しく抱き起こした体が縋るように俺へ溶けた。


「また明日くれば良いじゃねぇか。」
「、明日なんか嫌いだ。」


いつか山本は変わらない今日が好きなのだとこぼしたことを思い出した。明日になれば世界は変わる。ずっとなんて在りはしないことを知っているから、変わらない今日が好きなのだと。馬鹿だよ、お前は。世界なんて今この一瞬にも変わり続けているんだ。だからこんなにも脆い今日に固執するお前は馬鹿なんだよ、でも、


「おっさんのことがすきだよ。」


変わらない今日が欲しくて、変わらない明日が欲しくて(。願わくばその先の未来も、。)

今日は、終わる。苦しいほどに胸を満たすこの思いもいつか消えてなくなってしまうというのなら。どうか、愛しいこの思いをずっとずっと忘れたくはない。(すきだよ。)世界がまわる、気が付けば夜はすぐ近い所に寄り添って居た。





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