獄寺×山本
!高校生




(おとなになんかなりたくない。)


そんなことを言うとまた、お前に怒られてしまうんだろうなあと思う。しかめっつらをもっとしかめて、ばあかって俺を怒る声がほんとうはきっとなによりも優しいんだ。だからお前に怒られるのがほんとはすこしすきだった、なんて。言わない、言えないよ(、なんとなく照れくさいから。)


(変わってしまったのは多分おれだけ。)


中学の頃と比べると獄寺の背はすこし、のびた。だけど俺の背もそれと同じくらい高くなったから結局は何も変わらないんだ。それから獄寺はまたすこしかっこよくなった。クラスの女子が獄寺を見るたびにきゃーきゃーいうのはちょびっと妬けるけど、もうほとんど慣れてしまった。

変わらないよ、獄寺は。ばかだと笑う優しい声も、俺を撫でる意外に大きな手もぜんぶ。変わったのはおれ、


(えらべないよごくでら、おれには、)


野球か、お前かなんて。俺にとってはどっちもくらべらんないくらいに大切で、だけど馬鹿みたいに野球にまっすぐでいられた中学の時とはもうちがう。大人になんてなりたくないよ、きっと子どものままならずっと変わらずにいれたのに。なあ、こんなばかなことばかり考えてしまうおれを叱って。そうしたらきっとおれはお前の手をとれるから。








(ずっと子どものままでいれたら、)


なんて、こんな馬鹿げたことまるであいつみたいだ。中学の頃からすこしも変わらないお前。きらきら輝く笑顔も、俺を呼ぶ優しい声もぜんぶ。グラウンドに立つあいつは悔しいくらいにかっこよくて、そりゃあクラスの女子も馬鹿騒ぎするよなあなんて。変わっちゃいないお前、だけど、


(そんなおまえを変えようとしているのはだれだ、)


優しいお前がどちらかひとつを選べないなんてことはじめからわかっていた。わかっていて、現実をつきつけて、知っているくせにあいつがほんとうはどちらの世界にいたほうが幸せかなんて。なのに悩むお前を馬鹿だと叱って、それからお前を引きずりこむんだ。お前がこの手を離さないとわかっているから。


(好きだよ好きなんだ馬鹿らしいくらいに。)


それでも、変わらないものなんてありはしない世界で変わらないお前を望んでいた。なのにその手を掴むおれを許してよ。叶うなら誰かこんなおれのことをばかだとわらって叱ってほしい。





101224

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