獄寺×山本 「もしもおれがおんなのこだったらさ。」 背中合わせの声が少し、泣きそうだった。ああどうせまた無理して笑って居るんだろう。お前の作り笑いは分かりやすいから。けど、だけど、今だけは気づかない振りをしてやる事にした。 「獄寺とさ、結婚すんの。」 「俺の意思は無視かよ。」 「へへ、うん。」 ひどく幸せそうな笑い声が何故だか涙腺を叩くから、気づかれてしまわないように火の消えてしまった煙草を意味もなくくわえた。山本の掌が、重なる。アスファルトで冷え切った掌に山本の体温は少しあたたかすぎて、このまま溶け合ってしまうかもしれない(。なんて、馬鹿げてやがる。)(ありえねえのに。) 「それから子どもはふたり。女の子は獄寺に似てさ、男の子はおれに似んの。」 「子ども、もっと居たっていいけどな。」 「獄寺のえっち。」 くすくすと笑う山本が愛しくて、だけどそれが叶わない事なんて多分俺達が一番よく知っていたから。もしも、なんてきっと一番残酷な言葉なんだ。背中合わせの体温はやっぱりただ静かに泣いて居た。 「おれ、ごくでらのことがすき。」 世界は今二人きりで、誰も俺達を咎めたりなんかしないよ。だから、今は許して。震える小指をだけど確かに絡めて、居るわけも無い神様に誓いを立てた。 title...へそ 101119 |