獄寺×山本 「獄寺、こっちだっけ。」 「ああ。」 「じゃあ、ここでばいばいだな。」 「そうだな。」 何時も繰り返すのは同じやり取り。だからほんとはお前も知ってるくせに。見慣れた十字路、俺は右にお前は左に。夜の色に溶けるお前はへらへらと笑っているのに、何時もどこか泣きそうで。それに気づかない振りをしている俺も本当は泣きそうだったなんて言ったならお前は笑うんだろうか。 「獄寺。」 「ああ。」 「ばいばい!」 「おう。」 駆け出す足音。夜に溶ける後ろ姿、一人の帰り道が長く感じるのはきっとお前が居ないせいだ。一人分の足音はやけにアスファルトを鳴らして渇いた心臓がお前を求めていた。 「あ!」 くるり。 多分、振り向いたのは同時だった。遠く笑うお前に今すぐにでも触れたいと思う。 「また明日な!」 泣き出しそうな声はそれでも零れそうなくらいにきらきらと笑顔。軽く手を振り返しただけでそんなにも幸せそうに笑うから。 (また、明日。) 在り来りで有り触れた、だけど何よりも幸せな言葉は胸に。自然に緩むこんな顔なんてお前は知らなくてもいいよ。 (ほら、また朝が恋しくなる。) title...にやり 101022 |