子供であるからして。


上手な息の仕方を教えて。むせ返る、ゲフンゴフン。あんたの気持ち悪い顔を見るたびむせ返る。何、その顔。にやついてて君が悪い(気味が悪い)視線の先はもっといや、辿りたくもないわ。

「…馬鹿みたい」

ぼやく。何がそんなに幸せなわけ。何がそんなに嬉しいわけ。あいつはあんたを見てないじゃん。何、その顔。ニコニコ頬なんか染めて、恋する乙女気取りですか?あいつはあんたを見てないじゃん。あたしはあんたを見てるのに。視線を再びあんたにやれば、あんたが嬉しそうに笑ってるもんだから、吐き気がして手頃な場所にあったティッシュの箱を投げ付けてあげた。

「――っ!?いたいっ!」

あんたの声。こっちをみる揺れた瞳。ばーかばーかあんたばーか。うるっと揺らした瞳から零れた汁。歩いて近づき、ベロリ、舐めとってあいつの横から引きずり出してあげるのよ。そう、あたしは子供なの。あんたがいなければ、息の仕方もわかなくてイライラする子供なの。だから、今だってあんたを実感したくてしょうがない。しょうがないから、まだしつこく痛がるあんたを後ろから抱えこんでその頭に顔を埋めた。深呼吸3回。呼吸正常。心拍数も安定中。内情も穏やか。いいかんじ。でもあんたは痛がるばかり。

「…ミク姉」

あいつを意識して少し低めの声で呼び掛けてみる。おんなじ顔した私達の違いなんて髪型と性別くらい。意識すればあいつに成り切れる自信はたっぷりあるのよ。証拠にほら、痛がってしかなかったあんたは頬を染めて潤んだ瞳。耳元であいつに声かけてもらえた気にでもなった?林檎みたいよ、ねぇ。

「ミク姉かーわい」

クスクス。笑いが零れる。可笑しくてしょうがない。あたしだとわかりつつもあいつだと期待してしまうあんたと、その頬が、じゃない。あたしにときめいてくれてるんじゃないと知りながらもあんたが頬を染めてるのが嬉しくてしょうがないあたしが。



そう、あたしが。


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