Starduster


逃げました。


全速力でぶん投げられたボールよりも、遥か彼方をさ迷う迷子の衛生達よりも、遠く、遠く、どこまでも遠くを目指して。私は彼から逃げたのです。その時はもう、何が怖くて何が恐ろしいのかという次元を超えて、ただ、ただやみくもに涙だけが私の感情でした。今まで考えないよう必死に頭から振り払っていた事実を目の前で疑似体験してしまって、ああああああもう、頭には壊れてしまったかのように同じ場面のリピートリピートリピートリピートリピ頭を抱えて喚くこともできず、声を発することはおろか、表情だって歪めることができず涙だけを流す私の滑稽さ!救いようのない愚か者で、救おうと延ばしてくれた彼の優しささえ怖くてひとっ飛びで逃げだしました。今なら何が怖くて何を恐れていたのか手に取るようにわかります。なんせ私の感情なんですから分からないほうが本来おかしいんです。怖いのはそう、愛されないことでした。青い私の静けさとは反対の眩しい黄色の彼に愛されることを望み、愛されないことを恐れ逃げ出したのです。でも、逃げ出すといっても所詮は程度の見えたもの。データというデータに繋がれしかたなく誰も知らないであろう、誰もいない暗い部屋に身を預けていました。伸ばした手が掴む暗闇。手の輪郭が黒に深く溶け込んでもういっそこの闇の塵と同化してしまいたい不可能な葛藤を巡らせるわけです。愛される権利を失うくらいの闇に宙に、消え失せてしまえたら、と。しかしそれでいて自分という個体は我が儘なもので、そんな私ですらも愛されたくてたまらないのです。



(誰も愛してくれないひんやりとした暗闇の世界で少しずつ冷える身体を小さく抱えてはぁ、っと吐き出した息になぜだかこれまでにないくらい生きてる自分を感じました)


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