青臭い。


静かな空間だった。二人。人間が二人同じ空間にいるというのに、実に静かな空間だった。聞こえるのは壁、窓、扉の向こうから霞んで聞こえる騒音と、時折動くときに聞こえる服の擦れた音、それから、呼吸音。何をするわけでもない。何をはなすわけでもない。ただ、同じ空間を共有するだけ。今隣にいる人は女で、ツインテールで、綺麗な人。それ以外は何も知らない。それでいい、それだけがよくて。干渉せず、干渉されず、何も言わない。何も聞かない。ただそっと、手を繋ぐ。温もりがじんわり伝わって、一人じゃないと安堵。知らない人のはずなのに、身近に居る誰より落ち着く。昔はこうやって同じように手を繋ぎながら、自分の生きてる意味を考えてた。最近は、最近は彼女を考える。どんな空間をどんな風に生きているのか、どんな風にはなすのか。何に苦しんでいるのか。そしてしばらくして聞こえる5時の鐘で何をいうでもなく手を離し、僕らは別々を生きる。さようなら、も。また明日、も。なにもなく扉の閉まる音。少し寂しく響くその音だけど、去り際の扉の向こうに微かに見える笑顔に、僕の居た意味があるような気がして。がんばれ、心で呟いた。彼女が去ってから少し待って、重たい腰をあげ僕も僕の日常へと戻る。少し霞んだ空に、流れる雲、彼女と別れた後に見える景色は何故だかいつも綺麗で、綺麗で、静かにため息を零す。電話番号も知らない。メールアドレスも知らない。住所はおろか、年齢も、名前も、君の泣き声以外も知らない。ただ同じように、ただ傍に居てくれる人を望んだ僕らは、何処かにてるかもしれないけど、僕はあんな綺麗に笑えないから。やっぱり違うんだなって思った。



(少年はまだ、)
(それを恋だと気づかない。)


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