うとうとと昼間の陽気にさそわれるのは学生の性分。しかたないでもよくはないと頭で葛藤をおこしつつもどうしようもないのが妬ましいくらいに定着している。ああ、やばい、やばいぞ。なぜえがかれるときたいていが禿げ頭キャラなどという教師達は5時間目などといった地獄に現国という睡眠薬を投与したのだ。時間割を即刻考え直すべきだと私は講義してやりたい。ぼんやりとしか動かない頭をわずかにもたげ前を見やれば緑の黒板が白いチョークでつらつら埋められているのが分かる。ちくしょう。来月はテストだというのになんだこれは、ありえない。眠たい眠たい眠たい。ああ、いっそのこと寝てしまおうか。いい、きっともうそれがいい。お腹いっぱいだし、私は後ろの席だし。大丈夫、もう寝てしまおう。腕を枕にして、もう知るかと顔をうつぶせにする。ごつごつと骨があたるのは痛いが、眠さがピークにたっした今となってはどうってことない。寝てしまおうと思うとさらにやってくる眠気に気持ちよく身を任せ、日の光を背中に浴びていればふとガタリと椅子を引く音が聞こえた気がした。眠たくて確かめるのも億劫な私にとっては酷くどうでもいいことだったが多少なりとはいえ意識が現実に戻され、耳は勝手に外の音を拾い始める。「先生」リンとした声がすぐに流れ込んできた。

「風介くんが昼寝をしています」

昼寝。昼寝。はは、私のほかにも眠たい人がいるわけか。それはしょうがない、なんせ今は5時間目なのだ。私のほかに眠たい人間がいてもおかしくはない。誰だっけ、ああ、風介とか呼ばれていたな。風介、風す…、

「っ」

思わず立ち上がる。眠気が一瞬で後ろへ去っていくのを感じながら声のした前を見れば学級委員長であり、同じ園の仲間である倉掛が私の方を指差し先生と会話をしていた。

「あ、おきたみたいですね」

「な、」

口がパクパクとなさけなく開閉運動を開始し、彼女はそんな私をみてくすりとわらう。怒りを通り越して漠然だ。ふつうちくるか?ふつうはちくるものなのか?などと寝ぼけた頭で考えれる精一杯のことを考えつつ、彼女を黙って見続ければ先生が一つこれ見よがしに咳払い。嫌な予感がする。この先生は怖くないことで有名だが、漫画のようなことをさせることでも有名だからだ。今日はなんだ、グラウンド一周か?バケツをもって廊下にたつか?

「あー、じゃあ涼野は目が覚めるまで廊下にでもたってろ」

…バケツは許されたようだ。なにやらもう抵抗することさえばからしい。「はい」とだけ返事をしてもういっそ6時間目も廊下でつぶすかと頭でぼんやり考えながら教室と廊下を隔てるドアをゆっくり開ける。「先生」そんな声が再び聞こえたのはそんなときだ。この声はまた倉掛。なんだ、まだなんかあるのかと若干身構え早く出てしまおうと足を廊下に出した瞬間聞こえてきたのは「私も眠たいので廊下にたっていますね」などというふざけた発言。思わず振り返ってみた先には私と同じように唖然とした先生の顔。倉掛はもう廊下に向かって歩を進め始めていた。

「何してるの、風介くん。早く出ないと授業できないでしょう?」

「あ、ああ」

彼女に続く形で出た廊下は日があたらないせいでひどくひんやりしていた。眠気など彼女のせいでとっくの昔に飛んでいたけど。




風介とクララ






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