おかしかった。おかしかった。頭の中がグルグルして、無意識にくしゃりと歪んでしまう程度にはおかしかった。正直いまだってこうして少し痛いくらいにボクの髪の毛を引っ張っていないとまともな顔でいられないくらいおかしくなっていることをキミは気づいてくれているかな、折紙さん。…なんて、ううん、気づいているわけがない。彼は今おしゃべりに夢中なんだ。ジムの関係者の女の子達にかこまれて、ふわふわ揺れる柔らかそうな髪に手をやりながら、「ありがとうございます」って困ったようにはにかむんだ。そんなへらへらしたキミの顔を見てると、先日おめでとうだなんて柄にもないこと言ったボクが馬鹿みたいに思えてきたよ。「ランキングみましたよ!おめでとうございます、サイクロンさん」だなんて、あんな子達にだって言えちゃう簡単な言葉なんだから。ボクが言ったときと対して変わらない受け答えをする彼にだって、なんだかボクが特別言わなくても別によかったって言われた気がして、ちょっぴり、…いや、かなり悔しい。ヒーローアカデミーにお呼ばれで行って帰ってきてから折紙さんはなんかふっ切れた、っていうのかな?相変わらず見切れたりとかしてるけど、変わったんだ。変わって、動いて、人を助けて。頑張ってるのを見てた。だから、ボク達はライバルみたいなものなんだけど「報われるといいな」なんて考えたりして、順位上がったのを見て思わず喜んじゃったりして。ああ、こんなの実にボクらしくない。現に今だってさっきからトレーニングがぜんぜん進んでないし、これも全部折紙さんのせいだなんて勝手に責任転嫁。ボクだけこんなグルグルして、彼はずっとへらへらして。あんまりにもむしゃくしゃしてきたから「折紙さんなんて嫌いだ!」なんて叫んでやった。彼を囲んでいた女の子達はもちろん、彼もその綺麗な紫目をパチクリさせて、ボクを見たから少しだけグルグルがとんで、その目にもっとボクだけうつしていてよなんて願望だけがころり。グルグルして汚くて真っ黒なこの感情の名前くらい、ほんとは知ってるんだ。ファイアーエンブレムがブルーローズに言ってたの聞いてたもん。ボク、食べること好きだし、そんな女の子みたいな話題は照れ臭くてその時は「いつでも自分でお餅を焼いちゃえるなんていいね!」って笑ってみせたけど、ああ、ごめんねブルーローズ。こんな真っ黒に焼けちゃうような火力でお餅なんてボクも妬きたくなんてなかったよ。





おんなのこのララバイ






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