キミとの恋は、ただただ甘くて優しい。


 ふわりと柔らかい春風が舞い込んで軽く引いていたレースカーテンを揺らしていくのを夢現な感覚の中見つめていた。暖かくなってきた陽気は気持ち良く入り込む風もたまに冷たいけど花が綻ぶくらいには暖かいものへとなっている。
 ソファーの上で寝転んでうつらうつらと瞼が落ちては上がり、寝るのか寝ないのか良く分からない感覚の狭間をさ迷いながら、あぁそういえば今日は洗濯でもしようかと思っていたことを不意に思い出す。
 けれど夢に片足を突っ込んだ体も頭も自分のものじゃないくらいに動かない。……動こうとしないのかもしれないけど。

「ミクさん」

 ふ、と近くから聞き慣れた声が優しく私の名前を呼ぶのにも反応が出来ているか分からない。なに、と聞いたつもりだけど伝わったかは分からないまま瞼を閉じると頭から肩にかけて浮遊感を感じた。すぐにくっつけられた頭はソファーとは少し違う感覚に薄く瞳を開けば、口元を緩ませ微笑むレンくんが私を見下ろしながら目を細めているのが見える。

「レ、ン……く、」

「おやすみ」

 名前を呼んだ自分の声も遠くて、それでも必死に瞼を上げていれば優しい掌が私の目元を簡単に覆う。上から下へ移動した掌が頭を撫でている感触にゆらゆらと夢現をさ迷っていた意識は容易く夢へと傾いた。
 近くに感じる人の気配や温もりが優しくて安心出来るから甘えるように頭を擦りつけて、さっきまで覚醒させようとしていたはずの意識を手放す。
 手放すほんの僅か一瞬前にレンくんの、あの優しくて甘い声が何かを紡いだ気がしたけど上手く聞き取れなかったから、起きたら聞いてみようかと思う思考すら夢に沈んだ。


 甘やかすみたいにただ優しくて、穏やか過ぎるくらいに穏やかなこの関係が一番心地良いと思う。
 ありがとう、私の傍で微笑んで居てくれて。
 そう伝えたら、大好きな笑顔を浮かべてくれたらいいな。


【キミと私の優しい時間】

END






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