「軍人さん軍人さん、あなたはどうして常にそんな嫌らしい笑みをたたえているの?」

グルリ。彼の首が不自然に回ってその大きな黒目が私を捕らえた。肌色というにはあまりにも白に近い肌に生える口元の朱は今も今とて唇にあわせ嫌らしく変形している。ああ、なんて気味の悪い男。見れば見るほど奇天烈、下劣そんな言葉しかでてこない。(あの人とは大違いだわ。)だなんてはしたないと思いつつも比べてはため息がぽろぽろり。何故今私の目の前にはコイツしかいないのだろう。再びもれそうになるため息を視線をずらして飲み込めば、こちらをみたままだったらしい彼がさらに唇を吊り上げ肌に負けないほどの白い歯をみせてきた。

「今、誰かとおくらべになりましたね?」

彼特有の笑い声をあげながら振動させられた空気、鼓膜に伝達。あまりにも図星をえていた突然の発言に返す言葉が見当たらない私はただただ目を見開くばかり。そんな私の様子に満足げな彼はまた笑顔を濃くした。嗚呼!憎たらしい。舌打ちでもかましてやろうかしら。お父様がこいつの話はためになるからといって連れてきてくださったけど、こいつは何も語りはしないし、人をイライラさせるだけ。なんなの、なんなの。ああ、もう!

「あなたの歪んだ顔はとても好きですよ」

嗚呼!忌ま忌ましい!!


姫曜日の出来事。






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