とおくの、とおくの光を数え集めるような不確かな感覚。彼女を伝えるにはそんな手探りな状態が一番しっくりくる。言葉でうまく表せない概念とでもいうのだろうか。伝えようとすると不自然に声が喉を通らなくなるのだ。それでも、それでも無理矢理搾り出して伝えたい葛藤が胸を燻るからたまったもんじゃない。叫んでやりたいんだ。彼女の存在を彼女を。私の想いを。喚いて、散らして、彼女にただ彼女に伝えたい。その代わりの手段のように歌を歌うけれど、その想いをぶつけるように歌うけど、何万人の人に「素敵だ」と言われても、貴女がただ一言「綺麗」と口にするだけで私の心が大きく揺れることをご存じだろうか?その一言を貰った瞬間、もうそうしなければいけない何かなように、ほおっと私の口から息が抜けるのだ。そして決まって「この歌はあなたなんだよ」という言葉を飲み込むんだ。それはあなたは知らなくていいこと。あなたは知らなくていいのだ。

「グミちゃん」

からりと彼女が私の名を呼び、かけてくる。そんなあたりまえのことが私に私を感じさせてしまうほど彼女はズルズル私を溶かしてる。あなたの声に声を返すことが厚かましいような気分にまで陥る私は、どれだけ彼女を神聖視してしまっているんだろう。気がつけば目の前まで来ていた彼女は私と視線が絡まったのを確認してから「一緒にお散歩にいかない?」と笑う。眩暈。動悸。息切れ。頭で小宇宙が大爆発した。

「いく」

頭の中が天変地異を起こしてしまっているままポロリともれた声は、単語だったけどおかしくはなかっただろうか。ああ、大丈夫みたいだ彼女が笑っている。そういえば今家にはあの双子も、ルカも、年長二人もいないんだっけ。そうか私だけかなのか。暇で暇で、一人遊びにもきっと飽きて、何かしたい。誰かといたい。そんな彼女の欲求を満たせるのは。今、彼女には私しかいないのか。思わず押さえた口元を、隠しきれない喜びを彼女はどう感じるだろうか。ああ、それが「気持ち悪い」だなんて思われてなければいいのに。




融解度54%、






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