ぎりぎりと首を圧迫される感覚。目が覚めたら愛しい人の寝顔だなんてリア充物語はてんで昔に通り過ぎた。今、目の前に居るのは紛れもなく愛しい人には違いない。(違いはないけど、これは、)

「…っ」

夢だといいんだけどねえ。ぼやりごちる。突撃隣のドッキリ!とかなんかよくわからない特番とか。そんなんだったらいいんだけど。ぎりぎり追い詰められる気道にどうやら夢でもドッキリでもなく、彼女がただただ本気である事実を突きつけられてる。なんとも過激なモーニングコールだ。でもあわてんぼさん、世間はまだまだ夜中だぜ?こんな夜更けに彼女にベットで馬乗りされてるなんて言葉だけ聴くとなんとも素敵な昨夜はお楽しみでしたね状態なわけだけど、現実ってほんと甘くない、甘くない。ぎりぎりぎりぎり首は現在進行形で締め上げられていくし、上から垂れてくる彼女の長い緑髪が顔にかかってくすぐったい。打開策を考えようにも、正直殺されそうになるほど彼女を怒らせた事態に身に覚えがない。きっとなにかしらん彼女の勘違いだ。いや、勘違いで殺されそうになってるのとかマジ簡便だけど、今回ばかりは本気で心当たりがないもんだから、勘違いに殺されそうになってるわこりゃあ。ならば今度はその勘違いを説く方法を考えなくてはなわけだけど、彼女が口を開きもしないうちは無理だね。無理。え、何?つまり気道も確保できない俺は理由を問うこともできず勘違いした彼女に殺されるんです?…それはいい。まあ、そうだね、…うん、それ自体はなんら問題ないや。勘違いだってきっと愛あってのなんかだろう。俺こんなに愛されてんだぜってざまあみろ、って世界に笑いながら最後に見えるのが彼女の顔だなんて幸せじゃん。だけど、だけど、だ。俺は幸せだろうけど、彼女はどうなるかなんて。ああ、考えるのも嫌だ。警察に捕まったりなんかしたら俺が発狂する。彼女があんな狭苦しいところに閉じ込められて日の光も他者からの愛も受けずに生きるだなんてぜったい俺が発狂する。彼女が愛されて笑っていられない世界なんてなくていいし、彼女が自由で居られない場所なんて壊れてしまえばいい。何にも縛られず囚われず、好きなことを好きといい、笑っていてくれたらいい。きっとそれが世の中のあるべき姿だと思ってるし、…うん、じゃあ、そのためには、俺は殺されちゃいけないわけ、で。もはや息をするのさえこひゅーこひゅーと情けない音がしだしてる自分の喉を押さえつけてる彼女の手をつかむ。今までうんともすんともしてなかった俺からの突然の反抗にびっくりしたのかわずかに緩む手をひねり上げて形成逆転に持ち込んでやった。こんな夜更けに彼女にベットで馬乗りしてるなんて言葉だけ聴くとなんとも素敵な昨夜はお楽しみでしたね状態なわけだけど、現実ってほんと甘くない、甘くない。



甘い夜は好きですか?






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