これは一体どういうことなのだって、君が言った。知らないで、聞かないで、ぐるぐるぐるぐる願い続けた私の馬鹿な思考回路をあざ笑うかのように、君は私に問いただした。「どういことなの」だって?見れば分かるでしょ、聞かなくても知ってるんでしょ。ああ、なんて空回り。なんて滑稽。がんばったけど、ダメでした。嘘つくのちっとも上手にならない。作り笑いもやっぱり下手くそ。君が私より泣きそうな顔してらあよ。

「…見ての通りです、だよ」

観念してちょっぴりふざけてぼやく。君はピクリとだけ小さく反応した。見ての通りさ、聞いての通りだ。私はたっくさん君のしらないところで嘘をついてたのです。誤魔化してきたのです。それでも溢れ返っちゃってた欠片達が行き場をなくして、本来届くべき場所に流れついちゃったのです。

「君が知っちゃった通りだ。僕は君が好きなんだ」

分かりきってた。困ったように逸らされた視線。なんでこんな上手くいかなかったんだろうって、考えたって今更無駄で、いつもみたいにあげるつもりだった君の大好きな飴をガリリと握る。てのひらに飴玉。君に上げる恋心を溶かした甘ずっぱい涙味。きっとこのまま軽蔑されて、話しかけてもらえなくなって、毎日毎日放課後君にあげ続けたコレももしかしたら昨日で最後だったかもなあなんて頭は案外冷静だった。(もっと丁寧に渡しておけばよかったや、あーあ。)

「…」

沈黙。静か、空気。カラスが鳴いたよ。うん、しかし、まあ、どうしようかな。どうしようか。此処は彼女の部室だし、僕はしがない帰宅部だし。僕が立ち去るのがきっとベストで、でもドアに近いのは君で。横をすれちがったらビックリされるかな、あからさまに避けられるかな。そうだったら、やだなあ…。嫌われはしてなくても、きっと仲良しこよしではいられないから、いつもの距離が遠くなるから。僕はできるだけその事実をゆっくり受け入れさせて欲しい臆病者。指をさされて臆病と言われても、これだけはどうしてもどうしようもないんだ。

「…ごめんね、」

だから小さく先に謝っておいた。横を通るよ、驚かせるかもしれないね。(違うよ、ほんとは××になってごめんって、)謝る。言葉を重ねて謝る。違うよ謝るよ。ごめんね。ごめん。

「これで、さようならだ」

また明日ね、なんて、それじゃあ、なんて言えなかった私をどうか誰か褒めてやってください。未練を引きずる変わりに、僕は君を引きずらないから。僕じゃ君を引きずれないから。足を前に出して、横をヒュッと通り過ぎた、君がヒュッと息を呑む。やっぱりちょっと悲しくて、眉毛が下がった気がするけど大丈夫だ。心は全部連れて行くから、君には見せない。それよりもそうだ、明日からの登下校どうしようかな、うん実にぼっちだ。ふふふ、これは楽しい。君への想いをはせて歩こうか。うんうん、素敵じゃないか。きっと私の生きる時間でもっとも有意義な時間になりそうだ。ドアを閉めた。君は固まったままだった。笑える、笑った。それでも君はやっぱりかわいい。コツコツって静かな廊下に僕の足音。君の気配が遠くなる。僕から離れることは無いって思ってたんだけど、自分の未熟さがそれを許さなかったから事項自得だしょうがないや。歩く、歩く。伸びる影法師がたった一匹僕の後をついてまわる。こんなものいらないから、君を返してって、本日よりこれから毎日この心をズルズル引きずるのだ。




(ほんとはずっと一緒にいたくて、だから、)
(…気づかないでほしかった)



影法師、






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -