ミクちゃんが好きだ。おかしくて狂おしくて、馬鹿みたいに苦しいくらいミクちゃんが好きだ。好きだ。好きだ。大好きだ。歌ってるときの真剣な顔が好き。笑った顔が好き。泣いた顔も怒った顔も好き。ミクちゃんが好き。でも一番大好きなミクちゃんは、わたしじゃなくて彼に恋したかわいいミクちゃん。頬をちょっぴり染め上げて、彼の言葉に一喜一憂する、かわいいかわいい彼のミクちゃん。なんて不毛な恋だろうよ。自分馬鹿すぎる。まじ乙。茨の道を自ら望んで進もうだなんて、きっとわたしは地獄に堕ちても元気にやってけるんじゃなかろうか。(要は針山だの、血の池だのを進めばいいだけでしょう?)…いやいやでもまあ、そりゃあ、あのかわいいミクちゃんがわたしに向けられたらとか、考えないわけではないさ。かわいいだろうよ。実にかわいいだろうよ。でも、なんだか上手に当て嵌まらないのだ。形が少しだけ違うせいで嵌まらないパズルのように、わたしのことを好きなかわいいミクちゃんはなにやらちょっとだけやっぱり違う。それはきっとわたしが彼じゃないからで、きっとわたしを好きになってくれたかわいいミクちゃんと彼を好きな今のかわいいミクちゃんはまた別の色に染まってかわいいからだろう。そしてわたしは彼の色に染まったミクちゃんが一番好き。ああ、ほんと願いが一つ叶うならいっそわたしは彼になるね。あのかわいいミクちゃんをわたしだけのものにして、生涯ずっと側に閉じ込めておくのだ。ん?いやいや、あれあれ、でも待て。わたしが彼になったところで彼とは中身がことなる別物になるんじゃないだろうか。

「…ああ、なんてこった。お手上げだ!」

それじゃあ見せかけだけは大層立派に彼だけど、中身はわたし。彼もどきにしか到底なれやしない。あのかわいいミクちゃんを手に入れるには彼じゃなきゃだめで、わたしは彼になりたくてなれなくて。でももしもだ。もしもわたしが見た目も中身も彼だったなら、きっと今の彼のように彼女を手に入れることはしていないんだろう。だってそれが彼だから。つまり結論。私の好きなミクちゃんを手に入れることは一生涯無理ってことさ!




(ああ、やだやた!)





ぼくのほしいもの






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