春風のワルツ | ナノ


04

まぶたが重くて、頭が痛む。
昨日の夜はずっと同じこと考えてた。ひとりで考えててもムシャクシャしてくだけやったから、謙也に電話しよかと思ったけど何故か通話ボタンが押せんかった。

こんなに悲しくて虚しいのは、なんでやろう。

瀬戸さんに彼氏がおったから。そうやと思って悲しんでたけど、ほんまにそれだけなんやろうか。自分のことやのに、妙にわからんくなってた。いや、どこかでわかってる。そうやて認めたくないだけの、この気持ち。



「おはよー、白石。昨日はサンキュー」
「ああ、謙也か」
「うわ怖っ!暗っ!」



それからというもの謙也が心配していろいろ聞いてくれた。口を挟まず、言いたいことを全部言わしてくれる。良くできた男やなと、男ながらに思ったりもしながら話していた。



「なるほどなー。でもまあ俺らも年頃やし、色恋沙汰のひとつやふたつあるやろ」
「俺と謙也にはないけどな」
「ま、まあそうやねんけどな。そんな考えんなて」



せやな。そう返事したところに、颯爽と、美しく瀬戸さんが教室に入ってきた。つい癖で見とれてしまっていると、ふいに目が合う。にこりと笑う彼女に、昨日の出来事は夢なんやないかとまで錯覚してまうほど。



『おはよう。白石くん、忍足くん』
「あ、お、おはよう」



いつもなら通り過ぎるのに、俺の席で立ち止まる瀬戸さん。緊張感が走る。何を話そう、どんな顔しよう。迷ってるのも束の間、瀬戸さんが口を開いた。



『白石くん、昨日の夜、見たよね』



振り返り、内緒ね!と瀬戸さんは微笑んだ。呆然としてしまう俺とは裏腹に、謙也はなんか妙に感心していた。俺の心のオアシスが…。



「なんか、かっこええなー」
「傷心やわ」



見たよね、そう言った瀬戸さんの目はいつもと違ってた。なんと言うか、鋭い視線を一瞬向けられて、まばたきができひんかった。



「女って…怖いな」



そう謙也に呟くと、こんなもんや!と笑い返される。さよなら、俺の初恋。告白する前に砕け散って、ここまできたら逆に清々しい気分を味わうこともできるかもしれへん。あかん、心の中がぐちゃぐちゃや。








さよなら初恋
[ prev | next ]

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -