春風のワルツ | ナノ


01

「アンタもう別れたの?」
「まだ一ヶ月もたってなかったんじゃない?」
「だってあの男つまんないんだもーん」



机に座り、大っぴろげに足を広げ品もなく笑うクラスの女子たちをぼんやり横目にため息をつく。春やのにため息つくなや、と前の席に座る謙也は悪態をつくように笑った。
女の子は、もっと女の子らしくしてなあかんと思う。そんなこともおかまいなくクラスの女子は恥ずかしげもなく今日もゲラゲラ笑っている。



「素って感じで良いと思うけどな、俺は」
「みんなあんなんが素やったら泣いてまうわ」
「理想押しつけちゃう系男子怖い」



優しくて、笑顔が可愛くて。俺の中の女の子像は生まれてこの方変わったことがない。そんな子なかなかおらんと周りは言うけど、そんなことないと思う。



『白石くん、忍足くんおはよう。いつも仲良いね』



俺の席を通り抜け、振り返り微笑む少女。謙也より遅れておはようと俺も返す。誰にでも優しくて、いつも笑ってる。彼女こそ、汚れた世界に舞い降りた俺の天使。
みんな瀬戸さんを見習ったらええのにとさえ思う。女ってのが一緒なだけで、一緒のものとは到底思われへん。



「大して喋ったこともないくせによくそこまで言い切れるな」
「見てたらわかるやん!毒素がなくて!純粋で!」
「俺、あんまり瀬戸さんのこと知らんし」
「やから謙也も見てたらわかるて」
「あー、はいはい」



謙也とは何回このやりとりをしたことやろう。白石は理想を追いすぎやと謙也はいつも言う。これまでの俺は、謙也のその言葉を深く考えてかった。



「もっと、したたかなもんやと思うけどなあ」


謙也の何気ないこの一言を聞き流してる俺が後悔するのはそう遠くない。春の陽気に包まれながら何気ない日常を過ごしていた。








マイ エンジェル
[ prev | next ]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -