06


リビングのソファーで寝転がって、録画していた友人お勧めのアニメを見ていた。時刻は17時を過ぎたとこ。あ、数学の宿題やらな。明日当てられる感じやし。今また苦手な分野のとこやから、これまたやる気が起こらへん。



「あんた宿題やったん?」
『あたしも今考えてたとこでございますよお母様』
「はよやってまいや」
『ん…あとで』



なんでこうお母さんと考えてることがリンクするかな。言われると、さらにやる気がダウンする。あかん、体を動かしたくない。頭も使いたくない。冷蔵庫をゴソゴソするお母さんの背中をただ眺めてたら、せやせやと言い出した。



「あんたこれ、光くん家持ってって。暇やろ」
『こんなおっきなんいやや』
「おばあちゃんが送ってくれてん。運動不足解消にもなるし行ってきて」
『そもそもなんで光んとこなん』



スイカが入った大きなスーパーの袋を持ち上げると、思ったより重かった。光もまだ部活やから家におらんやろうし、おばちゃんに渡してさっさと帰るか。芹沢さんのことを知ってから、なんとなく光には接触しづらくなっていた。光のことを想う子がいようと、きっと光はあたしに優しくしてくれる。それが原因かなにかなんて今のあたしにはわからんけど、それだけのことで距離を感じてしまっている事実。

歩いて数分で着いてしまう光の家。久しぶりやなあ、何年ぶりに来たやろう。インターホンを押したものの、誰も出てこない。おばちゃん買い物にでも行ったんかな。連打してみても声は聞こえへん。



「鳴らしすぎや。潰れたら弁償やぞ」
『うわあああ!』



耳元で囁かれたためか、全身に電気が走る。あたしが驚くのをわかってたのか、叫んだときには光は耳を塞いでいた。目尻には涙が溜まる。こんなに胸が鳴ったのは久しぶりや。



『ひっ、ひかる…』
「なんやそれ、スイカ?」
『お母さんが持ってけって』
「ナイスおばちゃん。サンキュー」



あたしの手から軽々とスイカを奪い去っては、もう玄関の鍵を開けてはドアノブを引いている光。じゃあ。と告げると、入ってかんの?と聞かれた。部活から帰ったところで光も疲れてるだろう。あたしの相手なんてさせられへん。そんな考えの片隅に、ふと芹沢さんの顔が浮かぶ。



『ううん。あたしこの後用事あるし』
「ふーん。ほな気ぃつけてや」
『ありがと!』



こんなに近いのに遠く感じる。あたしが困ってたら、今までと変わらずに光は助けてくれるやろう。自分でもわからない切ない気持ちで帰路についていたら、不意に涙が零れた。


涙に濡れて

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