02


やっぱり英語の教科書は昼休みになっても返ってくることはなかった。光のあほ。借りたもんくらい自分で返しに来んかい。怒りながら七組の前まで来るも、見慣れへん教室の中を覗くと一気に心細くなった。
光、ようあんなしれっと三組に入ってこれんなあ。あたしには無理や。



「愛やん。なんや」
『来たな、ピアス野郎』



目が合っただけで廊下まで出てきてくれた光。こうゆうさりげないとこには気ぃついてくれるみたいやけど、やっぱ自分で返しに来えへんあたりは腹立つ。



『英語の教科書返しやがれー』
「ああ…」
『ああ…や、あらへん。ふつーはな、借りたもんが返しに来るって礼儀が…っとすみません』



廊下と言えども教室の入り口の前で喋ってるもんやから、七組に入りたい人の邪魔になっとった。あたしの後ろを横向きながら通って教室に入る七組の男子に謝るも、背中越しにえーよえーよと気を遣わせただけやった。アンタが早よ返さへんからや。声に出さずに目で訴えると光は察したんか、教室に入った。すぐに戻ってきた光の左手にはあたしの英語の教科書があった。


「ん」
『ありがとう』
「ぷっ。なんで愛が礼言うねん。逆やろ、フツー」
『あ、ほんまや』



ほなね。そう言い残して光から背を向けた。ちょっと歩いたところでまた光に名前を呼ばれて振り返る。



「…おおきに」



またいつでも借りにおいで。そういう意味を込めて笑ってやった。手を振り、教室に入る光。前を向くと、三組の方から友達が走ってきた。探したよと笑いながらあたしの方に駆け寄ってくる。



「どこ行ってたん?」
『光んとこ』
「財前くんかー。あんたたち仲良いもんね」
『そう?別にフツーやで』
「さっきの休み時間も財前くん来てたやん。会話成り立ってなかったのに話が進むあたり、息ピッタリ」



さっきの休み時間、そないに変な話したっけ。全然覚えてない。財前くんと仲良おてええなあ。てよく言われるけど、いまいちピンとこえへん。中学に入ってクラスも離れて、それでこそ一緒におる時間は減ったものの、やっぱ小さい頃から傍におる子や。急にそないな風に見られへん。



『でも光、いっつも苛めてくるけどな』
「愛…なんか恨まれたりとかしてたりして」『ははっ。ほんまやな。』



腐れ縁ってのはきっとこんなもんなんや。それはこれからもきっと変わらへん。今のあたしは、疑うこともなくそう信じてた。


ずっと変わらない

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