01


とてつもなく眠い。目を擦りながら頭を上げると、もう教室は賑やかになってた。…またやってしもた。苦手な数学やから起きとこ思てたのに、懲りもせずまた寝てしもてた。これでまた期末の点数下がったな。
髪を掻き上げると、ぐにゅっと鈍い感覚。あ、髪結んでたん忘れてた。あかんわ、今日はついてへん日や。次の授業なんやったっけ。確か理科やったような。



「愛」
『…うわぁ!光!』
「英語」



頭上から聞き慣れた声がした。それでもやっぱり寝ぼけてる頭では驚いてまう。黒髪にカラフルなピアス。だるそうな表情。いつもと変わらん光。いきなり英語て言われてもなんのこっちゃわからへん。



「やから、英語」
『なんやのん。驚かさんといてや』
「忘れてん」



光の七組は次は英語なんや。しゃーないなー。と机の中をごそごそしてやると、英語の教科書が姿を表した。



『こいつやな、三限目の光の敵は』
「しょーもないこと言うてんなや。はよ貸せ」
『あ、それが人に物借りるときの態度かいな』



わざわざ三組まで借りに来んでもええのに…。そんな光て友達おらんのか?そう考えてると、考えてることが顔に出てたんか、光がムッとしてた。と言うより、めっちゃガン飛ばされてる。



「なんやねん。髪ボサ女」
『うっかり掻いてしもてんもん。結び直そ思たら光が来てんやん』
「もうほどいてまえや」



あっ。そう反応したときには既に遅し。光にゴムを引っ張られてほどかれてしもてた。ちょっと!そう言ったときには、光はもう教室を出ようとしてるとこやった。ちゃっかり、左手にはあたしの英語の教科書が。



『五限までに返してやー』



あたしの要望も届いてんのか届いてへんのか。ほんま光って相変わらず。
光こと財前光とは小学生からの付き合い。家も近所で、よく一緒に登校しとったな。いっつも光はあたしをいじめてばっかりで。なんかあったらすぐ突っ掛かってくる。それは中学に入ってクラスが離れても変わらんことやった。
それにしても教科書くらい、部活の友達に借りろよな。まったく。


あなたとあたしは
(どこにでもおる幼馴染み)

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