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取り乱した心を落ち着かせるためにも、光と近所の公園までやって来た。昔よく乗ったブランコ、滑り台。此処には思い出が沢山ある。中学生になってもう此処で遊ぶこともなくなってたけど、今でもあたしにとって思い入れのある場所。
ドキドキを隠しながらもベンチに座る。光とキスしてしもたせいか、鼓動がうるさくてしゃーない。



「キスくらいで。子どもか」
『あほ!初めてやってんで!』
「そんなん俺もやし」



なんでそんな飄々としとけんのかが謎や。あたしなんか熱でもあるんちゃうかってくらい体が火照ってんのに。そんなマイペースなとことか、ほんま変わらん。なんでこの状況でそんな冷静でおれんねん。



『だいたい光はわかりにくいねん!急に好きとか言われてもピンとこえへんし…』
「はいはい。鈍感な愛ちゃんには難しかったかなー」
『なんやとー!だいたい光かてそうやん。芹沢さんにだって優しいし…』



自分で言うといてハッとする。あかん。なんか墓穴掘ってもうたようなこと言ってしもた。思った通り、あたしには思わしくない空気が漂ってる。光のニヤニヤした表情がまた鬱陶しい。



「あ、妬いてんねや。愛ちゃん」
『ちゃ、ちゃうわ!』
「愛も気難しいなー」



断ったら断ったらで文句言うくせに。光はそう言って空を仰いだ。まさかあのとき、光はあたしのために?それをあたしは勝手に寂しがって。情けなくなって、あたしも空を仰いでみる。夏の空は眩しくて、何故かまた涙が出そうになった。



『ごめん、光…』



ぽつり呟くと、光は頭を撫でてくれた。怒ってないことくらいわかってる。でも、謝らずにはおれんかった。勝手な自分がほんまに情けない。



「ごめんより、好きの方が聞きたいけどな、俺は」
『…は?』
「謝るくらいなら、好きやって言え。な?」



不器用なんはあたし。夏に負けへんくらいのこの熱い気持ち、いつか光に伝えるから。不器用なあたしなりに言葉を整理して、いちばん大切な、光に。



「愛が望むなら、俺はいつでも言ったるから」



跳ね上がる鼓動。あたしだって、光に伝えないといけない気持ちがたくさんある。



『ひかるっ』
「おう」
『あんな…あたしやって、光のこと』



眩しい太陽の煌めきの中で、あたしの不器用な恋が始まろうとしていた。


Dear my darling


(夏の太陽よりも)(君の笑顔のほうがずっと眩しかった)

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