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小さな頃から光はあたしを助けてくれて、あたしは光に迷惑ばっかり掛けてきた。そんな光に言えていない言葉がある。伝えたい言葉がある。
学校を出て、いつもの通学路を駆ける。水溜まりも残ってて走りにくい。でも今は不思議と苦じゃない。足元で光る滴が飛び跳ねている。幼い日のあたしより、速く。



『ひかるっ!』
「愛?」



光の姿を見付けると、酷く安心して涙が出そうになる。ぐっと堪えて立ち止まる。風と光が舞う季節の中で、光が輝いて視界に映る。



『あっ、あの』
「どしたん」



言葉が出てこえへん。伝えるのが怖いと、喉が嫌がって震えてる。今までそうやって逃げてきたけど、もう逃げないと決めたのだ。伝えられてない、ありがとうとごめんねがある。思ってるだけじゃ、いつまでたっても伝われへん。



『いっ、今まで助けてくれてありがとう!めっちゃ感謝してる!』
「…?」
『そんで、ごめんなさい。あたしがしっかりせえへんから、光があたしのお守りばっかする羽目に…』



堪えてた涙がついに溢れる。ああ、予定と全然違う。でもあと少し。散々迷って出したあたしの答えや。もっと自信を持って、胸を張れ。そして笑え。もう、光に心配掛けなくていいように。風よ、あたしに吹いて。



『でももう大丈夫!あたし、強くなるから。光がおらんくても、泣かへんから』
「何、言ってんの」
『やから、今日まで。今日まで、泣き虫でおらして…』



幼い頃のあたしと光が頭の中を駆け巡る。涙が止まらへんことが堪らんくなって、光から逃げ出してしまう。あたしの名前を呼ぶ光。幼い頃と変わらへん。好きやったな、その光の声。その声を聴いて旅出てるあたしは幸せや。



「待てっ」



涙で視界が揺らぐ。追い掛けてこんといて。そう願うも、あたしの思いはきっと光には届かへん。あたしの気持ちはちゃんと伝えられたから。それはもう大満足なくらい。光の足音が近付いてくるのが何だか怖くて、夏の空の下、がむしゃらに走った。


奇跡の足音

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