04「高原さんって年下に告られたことある?」 うららかな昼下がり、昼休みという名のランチタイムに白石くんが拗ねたような口調で言った。彼と付き合いはじめて早一週間、白石くんと私がふたりで机を向かい合わせてお弁当を食べる風景も、そろそろこの教室に馴染んできたのではないかと思う。 『会話がすっごい女子だね』 「……」 『ないよ。私のこと買い被りすぎだって』 みるみるうちに白石くんが拗ね顔になってく。口なんてへの字みたいになっちゃって、妬いてんのかな。だとしたらまた新たな発見だ。この一週間、いろんな白石くんを見てきた。楽しくて、知るたびにもっと知りたくなって、もっと、もっと。そんな風に深みにはまってく。いつも思うけど、白石くんってほんとに魅力的。 「…うそや」 『ほんとだよ。好きだとか言われたこと、ほとんどないし』 「アドレス聞かれたことは?」 ないない。そう言うと、口を尖らせてブツブツとなにか言い出した。信用されてないのだろうか。いや、そもそもこんな偽りの関係で信用されるもされないもない。信用されないほうが、かえって白石くんのためになるだろう。 この会話の意図はなんだろう。白石くんが話し出すのを、お弁当をつつきながら待った。 「テニス部の後輩がな…」 『うん』 「…なんもない」 どうしたんだろう。なんだか様子がおかしい。らしくないよ、と言いたいところだけどそんなこと言える立場じゃないこと、私なりに理解している。こういうとき、どういった言葉を掛けるのがベストなんだろうか。あれ、そんなこと考えてたら、この関係は一体どこに向かうんだろう。そんなことまで気になってきたぞ。 「財前」 『ざいぜん?』 「知ってる?」 『知らないよ』 それを確認しただけで白石くんは安心したのか、いつもの笑顔になった。それを見て私も妙にホッとしてしまう。私が抱きはじめてるこの感情は一体なんなんだろう。 『変な白石くん』 つい、つられて笑ってしまう。こうしてると偽りの関係だってこと、忘れてしまいそうになる。そうでなければ、嫉妬されてうれしいなんて微かに感じるなんてないはず。この想いは恋に近いのか。 嘘の中に絆が生まれてくこと。戸惑いを感じながらも、今の私にはそれを受け入れるしかできなかった。 正午に馴染んでく << >> |