03



学校に来ると教室内、いや学校全体が騒がしくなっていた。なんだなんだと教室に入ると、女子の全視線をまともに受ける。なに、何かしたっけ私。するとクラスでも言葉がきつく、気の強さもピカイチの女の子が入口で佇む私のところに凄い勢いでやってきては、言葉を投げ掛けてきた。



「高原さん!白石くんには興味ありませんって顔しながら一体なんなわけ?」
『…なんのことかな』
「とぼけないで!昨日、白石くんと高原さんが一緒に帰ってるのを見たって子がいんのよ」



ああ、そのことだったのか。その子の話によると今朝、私より先に登校した白石くんに聞いたところ確かに付き合っていると返事されたため、私に話を聞くしかない。という結論に至ったということだった。でもそんなこと言われたって答えようがない。まさか罰ゲームの行く末にやむを得ず、なんて言った日にゃ私の命なんて保証されないだろう。うまいこと、この状況を切り抜ける方法はないだろうか。



『えっと、その…』
「ちょっと可愛いからって調子乗ってんの?」
『いやいや。そんなことは』

「俺が高原さんに好きやから付き合ってくれ言うてんけど。それが何?」



振り返るとそこには自販機から戻ってきたであろう白石くん。左手にミネラルウォーターが握られている。少し怒ったような表情。普段見せない表情に、私も目の前にいる女子生徒も思わず怯んで言葉を失ってしまう。白石くんもこんな表情するんだ。やっぱり怒ったりするんだ。そんな顔も綺麗だな。やっぱり整ってるな。なんて思う私はやっぱり危機感がないのだろう。
行こ。そう言われて白石くんに引かれた左手。どこに行くんだろう。そこで何を言われるんだろう。私の前を歩く白石くんの表情を想像すると、なんだか可笑しくなった。








「ごめん高原さん!勝手なこと言って!」



屋上に着くなり、こちとら負けずに凄い勢いで謝る白石くん。申し訳なさそう。というか、悲しそうな表情をしている。綺麗な顔にはどんな表情も似合うなあ。そんなことを思っている私ってほんと一体何なの。



『うん、全然。大丈夫』
「ほんま…?」
『怒ってないよ。全然』



みるみるうちに白石くんの表情が明るくなる。思ったより喜怒哀楽激しいんだ。ってことはちょっと子どもっぽい?なんて笑ってると、白石くんもニコニコしていた。今の白石くん、格好良いと言うより可愛いかも。なんか見てて楽しい。



「あ、笑ってくれた…」
『え?』
「ご、ごめん。なんてゆうか、高原さんにつまらん男と思われてるんやないかて思ってたから」



安心して微笑む白石くんを見ると胸がいっぱいになった。ごめんね。そう言いたかったけど、やめておいた。謝ってしまうと、また傷付けてしまう気がした。私は、もう白石くんを傷付けないように努力しよう。
きっと白石くんは、私が思うより真っ直ぐな人だ。なんだかとても羨ましかった。


あなたは、意外と


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