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血の気がひくって、まさにこういうことを言うのだろうか。全身に寒気さえ走る。こんなにうまく笑えないなんてこと、あってはいけないことなのに。





事の発端は些細な遊びからだった。
仲の良い女友達との小テストの点数勝負。みんながみんな、この小テストは手応えがあったみたいだった。誰が言い出したかは忘れたけど、一番点数が低い奴には罰ゲームを用意しよう!なんて言い出したもんだからみんな盛り上がってしまって。


「はーい!じゃあ結衣の負けが決定!」
「あはは!78点で最下位ってのも皮肉なもんだねー」
『うるさい。で、私は何をすればいいのよ』



まさか80点近くもとっていて最下位だとは思わなかった。5人もこのゲームに参加してるのに。トップなんて95点もとってる。私が最下位かも、なんて不安がってた奴なんて88点もとってやがる。勝てるか、こんな勝負。



「そうだねー、じゃあ結衣には愛の告白をしてきてもらおうかな」
『は?私、好きな人いないっていつも言ってんじゃん』
「大丈夫大丈夫!」



何が大丈夫なのかさっぱり理解できないまま言いくるめられてしまった。

私に課せられたミッションは学園のアイドル、白石くんに告白して玉砕することだった。夏を終え、部活も引退した私たちには少しばかりの余裕があったようにも思えた。それもあってか、とくに最近は白石くんに告白する子が後を絶たないと、こないだ噂で聞いた。それに私も紛れ込め。それが今回のミッションなのだ。



『あんたたちの方が白石くんと仲良いじゃん。なんで私が』
「いいじゃんいいじゃん。私たちが放課後、教室に残っててって伝えといてあげるから」
『……』



なんだか腑に落ちない。よりにもよって何で白石くんなんだ。綺麗に、形だけ。与えられた台本を読むように、丁寧に断られる自分の姿が想像できる。私だけじゃない。きっと、他の女の子もそうだ。








『好きです。白石くん』



考えてたって仕方ない。さっさと振られて、みんなに笑ってもらおう。そんな思いで放課後を迎えた。白石くんは本当に教室に残ってくれていた。形式的な流れですぐ終わると思っていた私は緊張すらしていない。窓際に立ち、橙に染まった空を見上げていた白石くんに一言目から私は偽りの愛の言葉を投げかける。2組のみんなが帰るまで、他の組の子と話して時間を潰していたのだ。

予想外だったことは白石くんの顔が赤くなったこと。ここから歯車が狂いだしたのか。



「おおきに。めっちゃ嬉しい」



とびきりの笑顔で私に笑いかけてくれた白石くんに、私はどんな表情をしたらいいのかわからなかった。私の思い描いていたものと全然違う。どうなってんの、これ。



「ほ、ほな一緒に帰ろっか」
『え?あ、いや。私…』
「あ、高原さんにも予定があるよな。ごめん」



空いてるなら明日は一緒に帰ろうな。白石くんは笑顔でそう言い残して去っていった。ちょっと待って。どうなってんの。一体どうなったの。告白したことない私ですら理解できるのは、私がした告白が成功したということ。



『ど、どうしよう…』



四天宝寺中3年2組、高原結衣。人生初の告白が成功したようです。今の心境は後悔先に立たず。人の心を弄んだから、神様が怒ったのだろうか。これにて罰ゲームは終了。そんな甘くはいかないみたいです。血の気がひいていくのを、全身で感じた。


Mission complete?


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