あなたへ高原さん 今更こんな手紙を渡すことを許して下さい。卒業して、もう高原さんの姿も見られへんようになると思うと、何もせずにおられへんかった。 あの日、いつものように高原さんを目で追ってたら、高原さんが罰ゲームするって聞こえてん。罰ゲームの内容も聞こえた。残酷やと思った。絶対断ったろて決めてたのに、いざ高原さんに好きやて言われたら、嘘やとわかってても嬉しくて嬉しくて。でも不思議と後悔なんかなくて、それからはもう毎日が楽しくて仕方なかった。 いつしか俺も欲が出てきたりしてさ。アドレス聞きたい。名前で呼んでみたい。高原さんに触れてみたい。いろんな欲があったけど、結局勇気がなくて全部無理やった。高原さんに嫌われたくなくて、男らしくない行動ばっかりしてもうてた。 俺がこんなん言うんおかしいけど、高原さんには走っててほしい。一年前の夏、コートを楽しそうに走る高原さんを見て、一瞬で恋におちた。今やから言えるけど、三年で初めて一緒のクラスになれた時は小躍りしててんで。ほんまほんま。 とまあ、イマイチ何が言いたいかわからんような手紙になってしもたけど…。ただ、高原さんの記憶に残ろうと必死で弱虫な男やわ。憎んででもええから、俺のこと覚えててほしい。なんて贅沢なことを思てる。最後の最後までごめん。 ほんならそろそろ切り上げます。近付くほど、遠く感じる。なんでかわからんけど高原さんとのそんな関係、なかなか好きでした。 結衣ちゃんが楽しい高校生活を過ごせますように。そう祈ってます。 ほんなら元気でな!大好きな結衣ちゃんへ。 白石 蔵ノ介 ふわり、あなたに。 << |